たった一度だけ
診察させていただいた
患者さん


半年くらいはがんばろう

そう担当医ははなしていた

終末期に家族が
どうかかわってよいかわからない
とのことで

一度だけ
診察に伺った



浮腫、嚥下困難、喘鳴
幻覚

とても半年は厳しい



家族は迷っていた

今までの治療の選択
今の選択

間違っていたのではないか
本人はどうしてほしいのか


ときに
姉妹で仲良くして欲しい
早く楽にしてくれ
お迎えがまだこない、と
話し


ときに
歩けるようになりたい
食べられるようになりたい
何か治療はないのか


そう話す

その度に心が揺れる

どうしたらいい?
本人はどっちが本心?



“きっとどちらも本心だと思います”


そうなんですね、と
ポロポロと涙をながす

どれだけ真剣に患者さんに

向き合ってきたか

十分につたわる


“ご家族の判断は間違いはなくて
すべて患者さんのためを思い
最善をつくしたのだから”


らくにくるしまずに
家族の笑顔でみおくりたいんです、と
涙ながらにも
しっかり話される


なんて素敵なんだろう

患者さんも
家族の期待に応えて
精一杯生きておられた



しかし

お別れのときは近い

つらいことだけど

一週ずつ容態は変化していくだろう
眠る時間が増え
うわごとをいうこともあるかも
しれない

大事な時間であることを
伝えた


“はい。大事な時間を大切に
過ごします”


床ずれ防止についてや
水分の摂取法
口腔ケアを
できる限り伝えた



“ワンチームです”


そう伝えた


私がお会いすることは
もう
ないかもしれない

そう感じながら
ご挨拶をして
後にした





それから
一週間



旅立った、と
伺った







ご家族、大丈夫かな


今は辛いだろう
悲しみも深く
こんなに早くと、なげき
後悔すら感じているかもしれない



でも


きっと


あとからあとから
かけがえのないときであったことに

みなきづくだろう


ゆっくりやすんでください



ありがとう

からだはらくになりましたよね

これからは
家族を見守っていてください

お疲れ様でした