今後の生活について
相談したい、と
緩和ケア外来を
希望された患者さんがありました


主治医は
「痛みもないのだから
今受診しなくても」
そう話したそう

「まだ、緩和ケアなんて
あなたには、早いですよ」
「もう少しひどくなったら
紹介してあげますよ」



まだ早い
もう少しひどくなったら

デリカシーのない言葉

患者さんはそれでも
頼んだそう

すると
「たぶんなにも
しないとおもうけど
行きたければ、紹介して
あげますよ」

と、緩和ケアに紹介された


依頼書を書くのがきまりだから

簡単にかいていただくのだけど
3行
たったの3行


「患者さんが受診希望されたので
紹介さします。とくに症状はないですが、
患者さんの希望です(一部改変)」



まあ、いい
いつものことだし
直接お会いすればすべて
わかるはず


患者さん

「ようやくたどりついた」
「知り合いが、緩和ケアかかって
よかったから、迷うならいきなさい、って」

「ハードル高いね」

ははは!、と笑う


「まあ、いい」
「相談がある」


抗がん剤を行うと、体力がよわる
そんな感じがするから
治らないなら
生きる質を高めたい
このまま抗がん剤をつづけると
病気のために生きているみたい
病院にくるためにうごいて
治療のために食べて
なんのために生きているのか
治療のために生きている気がしてきた


ゆうじんの方は
治療を終了して
ゆったり過ごしている
自分もそうしたい、と


「がんの話ばかり」
「あたりまえだけど」
「腫瘍マーカーとかあがるばっかり」


どう生きていくか
考えたい、ということ、ですか?


「そうだよ」
「それが大事だよね」


生きる質
どう、生きるか、は
どう治療するか、ばかりじゃない


治療の継続の是非については
私は決めないこと
ただ、治療をすることでの
メリット、デメリットを考え

生活の質をあげるには
何が必要か
はんだんする、考える、ということ


それを伝えた


「よかったー」
「治療をしながらも緩和ケアに
かかってもいいんだよね」

「緩和ケアにかかると、治療はやめさせられるよ」

そうも聞いていたから、
それはそれで、さ、と思って


あたまをかく。

「やめたいのに、やめていいと
いわれたら、ってドキドキしていたんだ」


あーよかった、といいながら
目元を拭う

妻は一言も声を発しなかったが
妻も涙がたまっている

心配されていたのだろうな




また、くるよ、と手を挙げ
診察室をあとにする


妻は一度退室してから、小走りに
戻ってきて

「あんなに自分のこと話すの
はじめて聞きました」
「わたしも何かふっきれました」
「よろしくお願いします」と

すこし空気が和らいでいた



たしかに
処方もなく
診察料もなく

主治医のいう通り
なにもしなかったのかもしれない


でも
なにもしないようにみえることに
意味がある


生きる質を保つ
生きる質を向上させる



これこそ緩和ケア


治療するしない
抗がん剤するしない

関係なく、だ



どう生きるか

大事よね〜

緩和ケア医のなかには
がん治療を敵のように
みるヒトがいるのも事実

麻薬だ、鎮静だ、って

緩和ケアはちがうよ

ひどくなったら、ってあんまり