乳房にしこりがあるのには
何年か前から気づいていたけど
病院に通院することで
日常生活をしばられたくない、と
受診を控えていた
家族にもだまっていて
普段通り過ごしていた
だれも何にも気づかなかった
実は少し前から腰痛があった
「草むしりのせいよ」
「そう思っていたのよね・・・」
ある日
ついに
激痛で動けなくなって
たまたま家を訪れた娘さんに
発見されて
救急搬送された
それでも
“腰痛”とのみ訴えていたので
当初は
ぎっくり腰か?ヘルニアか?と
疑われていた
患者さんも
胸にしこりがある、ということは
言わなかった
時々ある
それほど大きいしこりではなかったこともあり
自己申告がなければ
なかなか女性の胸を
ばーっとはだけて
診察する事は難しい
原因がわからないから
CTを撮影した
それでも腰のあたりを中心に
撮影したので
やはり乳腺はうつっていない
「ばれなくてよかった。そんな気持ちだった」
結局のところ
骨転移が発覚して、乳腺の検査を、と
なり
すべて明るみに
「ばれちゃった」
「治療はしたくない」
「何にもせずにそのままでいい」
意思はかたい
が、痛みを止める効果もあるので
ホルモン治療だけしてはどうか
と
根気よく主治医は説明した
私もそれをすすめた
「そう言われたら、あんなに
まっすぐに言われたら
治療するしかないわよね」
「でもあの時があるから
今の私がいるのよね」
それから1年半経過
痛みはホルモン治療にて
ほぼとれてきた
当初は痛み止めをつかっていたが
それも必要なくなった
「また公園の草抜きに行ける」
「あのとき、なにもしなかったら
今の時間はないものね」
そう話す彼女の笑顔はかがやいていた
たしかに
患者さんの意思は
大切
でも
緩和ケアにきたからって
何もしないというのではない
その人にとって
最適な医療を検討することは
緩和ケアでもかわらない
「緩和ケアにお世話になっているから
最後はここで、とも思えるの」
「私はラッキーよ」
「たくさんの先生が、たくさんの
看護師さんが、たくさんの人が
関わってくれるから」
「治療をしたくなかったのはね
お金がかかると思ったから」
「それも高額療養費制度があるって
わかったし」
「ほんとにラッキーだった」
感謝してもしきれないわ〜
もうすこし生きてみようって
いまは思ってるのよ
うん
これこそチーム医療
これこそ多職種共働
これこそがん治療
これこそ緩和ケア
貴女の笑顔が
私の力になる
もう少し生きることができる
もう少し生きよう
緩和ケア病棟には自宅で
トイレにいけなくなったら
入院するつもり
と話す
一人暮らしのひとにとって
トイレに行けなくなったらというのは
切実で
そういう目安は
大事
社会資源を使用してどこまでできるか
コメントにもいただいた
そうなんです
簡単に訪問介護や訪問看護を
依頼してっていうけど
そのあたりは難しいところも
あって
見極めが大事だなって思います