膀胱癌の再発の
告知をうけた50代の
男性患者さん


その妻が、
緩和の外来を
受診されました


「夫にどう声をかけたら
いいのか」
「どうせっすれば
いいのかわからない」
「死にたいっていうから」
「そんなこといわないで
頑張ろうよ、と言ったら
怒ってしまって」


もうどうしたらいいか
わからないんです。家にいるのが
つらいんです、と眼をとじる




つらい告知のあと
患者さんは一旦ショック状態に
なるのだと思われます

そして、だんだん言葉を反芻し
悲しみや絶望感に
襲われる



つい、家族や、時に医療者も
大丈夫だよ、とか
治るよ、とか
安易な言葉かけを
してしまうことがあります


なぜか


どうしていいか
家族もわからない
家族は大切な患者さんの
苦悩を前に
なにかしてあげなきゃって
あせるから



なにかいわなくても
そばにいるだけで、いいのです

「死にたい」と言われたとき
そんなこといわないでー、と
いいたくなるけど…
“死にたいくらいつらいよ〜”という
きもちをそのまま聴く
なにも言わなくていいから
そばにいる


まずはそれで十分


どんな無理な希望でも
希望をもつことは悪くない
希望を支えることは大切


患者さんは
つらさ悲しさ、やるせなさを
理解をしてほしい
弱音を聞いてほしい、と
思っていることが
少なくない


“なにもしてあげられない”と
妻は言った


しかし
“なにかをすること”だけじゃなく
ただただ
“そばにいること”


それが家族の最大の役割なのだと
いうこと

患者さんにただただそこに
いるだけでいい、と願うように
家族もただただそこに
いるだけでいい、のだと思う、と
伝えた

「そうですね…」
「そうしてみます」
「また、相談にきます」
と、診察室を、あとにされた


それでも妻はまだ悩むだろう
だからこそ
そんな家族や患者さんを
支えるために必要なのは
医療チームなのだ


家族も第二の患者さんだから


弱音を吐いてもいい

家族にも安易な励ましは
避けた方がいい

“頑張らなきゃ、妻なんだから”とか
“娘でしょ?いちばんつらいのは
お父さんなんだから”とか


家族も十分頑張っているから

がん治療には
それもふくまれてこそ、だから

家族ケアは
患者さんのためにも
必要であることを
もっと医療者は
認識すべきだと、おもうよ




患者さんの家族の方へ

なにもできない、って
なにもしてあげられない、って
感じるかも

でも
家族の存在が
それだけで
そばにいるだけで
一緒に空気をすうだけで
いい

それだけでよいということは
そのときにはきづかないのかも
しれない