乳がんで治療をされてきた
女性

もう8年経過していた

脇に腫瘍があることに
本人は気づいていた

だれにもいわずに
半年が、すぎた


ある日
旦那さんが
気づいた


何気なくぶつかったときの
違和感


あとは

夫婦ならではのカン





夫は後悔
なんで気づいてやらなかったんだろう
早くつれてくればよかった



あたまから離れない


「どうか本人には治らないとかいわないで」
「頑張るって言ってるのに
そんなこといわないで」




患者さんは
抗がん剤治療のために入院
痛みとか息苦しさもあって
私達はお会いした


「ダンナに会った?」

はい

「ホントのこといわないでとか
言ったでしょ?」
「あ、やっぱり」


患者さんはゆったりと話し始めた

ダンナさんは心配症だから
ダンナさんにこそホントのことを
いわないでほしかったこと

しこりを感じて、再発だと分かったこと
化学療法がつらかったので
ダンナさんにその姿をまたみせるのに
抵抗があったこと


「ほんとは治療やりたくないのよ」
「息苦しさもあるし、ただごとじゃないわ」
「だれもはっきりは言ってくれないけどね」


ま、でも、と


「ダンナにはさぁ、頑張るよって
いうしかないじゃない?」


「まあ、いいわ。一回だけやるから」
「多分なおらないわ」
「でもね…」



「旦那さんにはいわないで」
「私は何も考えず頑張るっていう
ふりをしているから」



頷いた




これも互いが互いを思いやる優しさ




むずかしいなぁ



「つらくなったら緩和ケア病棟ね」
「楽に死にたいもの」


旦那さん嫌がらないかな?、と
伺うと

「嫌がるかもね」
「でも、それは私の頼みだから」
「ダンナにもそれは言っておくよ」


支えるとか
傾聴するとか
寄り添うとか


言葉はきれいだけど
現場はもっとなまなましく
血走っている


私達はこのご夫婦を
どう支援するのか


症状は薬でなんとかなるが
気持ちへの特効薬はない


だから難しい、と毎日悩むのだ




くもの切れ間の青
くもの色、形も様々
ひともひとりひとり違って当たり前