肺がんの男性
50代半ば

背中や腰がいたいからと
軽い気持ちで受診したさきで
転移性骨腫瘍と診断

肺がんの診断がくだりました


実は結婚を1ヶ月後に控えていて

結婚式が終わってから
治療を行いたい、という希望

少し難しいのではないか

一刻もはやく
治療に踏みきるべきだと
判断

半ば説得するように
治療がはじまりました


肝臓転移、肺内転移もあった


治療の効果はほとんどなく

二回治療を行って
本人から
中止したい、との申し出があった

「籍を入れないまでも
新居で過ごしたい」
「長年付き合ってきて
ようやく、だったのに」
「みんながんばれ、やってみないと
わからない、っていう」
「でも、もうつらいよ」
「弱虫だからさ、僕」


運命はなんて残酷なんだろうね、と
泣いた

一緒に
そらをながめていた


「弱虫じゃないけど」
と、私達
「治療はほんとに効果がないんだろうか?」
「次の薬なら、効くかもしれない」


「いやだよ」
「何年も生きられるわけじゃない」
「彼女に世話をかけるのは
最小限にしたいんだ」
「わがままだけど彼女と過ごしたい」
「家で」




なかなか
治療をしない、という選択肢は
選べないのが現実
私達としても、なかなか治療を
やめてもいいんじゃない?は
いいがたかった


彼女も
「いちかばちかでも治療してほしい」
「助かるかもしれない」


結果
医療チームと
家族に説得され治療にのぞんだ




そして



家にかえることはかなわなかった



がんに伴う脳梗塞を発症してしまい
昏睡に陥ってしまったのだ


痛みなのか何かわからないが
眉間にしわをよせ
常に苦痛様


痛み止めやら色々工夫した

彼女と、患者さんのご両親の希望があり
緩和ケア病棟に


「わたしが治療してほしいっていったから」

「こんなはずじゃなかったのに」


病室で
家族だけで
指輪の交換を行った
プチ結婚式


考えて考えて
選択した
信頼する彼女のために
がんばろうとした患者さん


彼だって期待していただろう

効果がでることを期待したはずが
反対の結果になってしまった


人生はとりかえしがつかないことも
多いのが現実

が、すべてのことが
その瞬間、その瞬間にしか
ないことで、一つしか選べない


しっかりした話し合いと
ある程度の覚悟は
人生にはつきものなんだな、と
いうこと

だからこそ
いつも思うのは
考えて考えて考えた結果は
なんであれ
正しくて
それが本人の意思ならば
なおのこと正しいということ


こんなはずじゃなかったは
へらしたいけど

きっとなくならない

でも
いつか、それでよかった、と
いつか、思えるように

支えていきたいんだよ



犬に休日はありません
たまにはお暇を
いただきたい