なんでよくならないんだ
なんでなおらないんた


誰だっておもう
命にかかわる病であれば
なおさら

肺がんの女性患者さんが

「夢で治ったゆめをみた」
「だから治る気がするのよ」
「なのに、何も状況が変わっていない」
「入院しているせい」
「退院すればよくならと思うわ」

そういってきかない

だからって家には帰ることはできない

身体の痛みは薬で何とかなる
でも
心の痛みはとりきれないこともある
どうやっても
薬がないこともある

この患者さんの娘さんから
「母は病気を受け入れていないと思うんです」
「だから何度も説明してください」
と、言われた

はたしてそうなのかな?

よいニュースはうけいれやすいけど
わるいニュースは誰でも
にわかには受け入れがたい

質問されたことに
丁寧に答えることを心がけた
やるせなさが怒りになっているだけ

なんでこんな風なの?
病院が悪い
まだまだ未熟なのよ、あなたたち!

私達も心がおれそうになった
でもいちばん辛いのは
患者さんだよね、と
ささえるときめたから

あしあとあしあとあしあと

ある日
ある看護師に

「ありがとう。やつあたりして
ごめんなさい」
「やつあたりしてみたけれど
状況は何も変わらなかった」
「この身体だけど
生きている意味がある?」

そう話したときいた

その看護師がなにを話したのかは
わからない
看護師本人が
特別なことははなしていないという

でも

その日から
何かがかわった

時間が
人が
氷をとかした

何より
患者さんが
自らの身体をうけいれた


どれだけ
つらいかわかるなんて言えない

今まで当たり前にできていたことが
できなくなる
一つ一つできなくなる

つらさは想像できるよ

無理に納得しなくていい
無理に受け入れなくていい

自分のペースで

進めばいい



わたしは
患者さんみんな
自信をもっていいと思う

それは勲章
誇り


前を向いて歩く

そっと
ささえる

いつかはみんな
誰かに支えてもらって
生きるのだと思います



ししとう

ビールにあう
夏だね