出血は止まることなく、輸血をしてもしても
おいつかない

父は

もう、いい。輸血は人の好意から
もらっているのだろ?もうやめていい
輸血をやめれば、死ねるだろう

このときの私。どんな顔をしていたのだろう

今死んじゃうのはいやだよ
塞栓術やってから考えよう。

あまりにも出血が続くので
緊急で動脈塞栓術を行うことになった
肝臓の腫瘍からの出血だった
一時的な止血が得られた

準待機的に手術を予定することになった

根治的な手術ではない
あくまで肝臓の切除のみ

あしあとあしあとあしあと

母と、妹には
私が父と打ち合わせをしたとおりに伝えた

治ることはないこと
でもこれから治療していくこと

母が一番驚くかと思ったけど、
意外と落ち着いていた

「そう。仕方がないわねえ。どうせ
お母さんにはいうなって言っていたんでしょ?」
「なんとなくわかっていたのよ」
「頑張ってもらいましょう」

妹はまだ学生だった

泣いた泣いた
結婚式すら見せられない
まごも見せられないじゃん

「いやだよー」
「病院かわろうよ」
「いまよりいい病院あるって」
「治してもらえるとこいこうよ」

そうだよね、まだ若い(歳が離れた姉妹です)
別れたくないよね

まずは手術までは行ってしまうべきであること
落ち着いたら、父の意志を確認しよう、ということに
なった

あしあとあしあとあしあと

無事に止血、その後肝左葉拡大切除術終了
ICUで対面したときには
涙がにじんだ

患者さんや、家族って
こんなに緊張するし
不安なのだということ

それでも、不安や心配をぶつける先もあまりないこと

体で感じる経験だった

父はかすれ声で

「生きてるのか。よかった」

そう言って目を閉じた

久しぶりに夜眠れたこと、鮮明に覚えている


前をむく
太陽をあびる
生きる