続きです。

70代の女性患さん
どうしてこの体調で、そんなに優しい目を
身体は少し辛そうなのに、穏やかな表情を

再発がわかり、抗がん剤治療を勧められ
相談先として緩和ケア外来を勧められ
私たちのもとを訪れてくださいました。

「わたしはね、もう十分生きたと思うの」
「娘は私の気持ちを大事にしてくれるのよ。娘は
治療してほしいかもしれないねぇ」
「不思議と気持ちが落ち着いていて。なんでだろうねぇ。不調の原因がわかって、やれやれ、って
ホッとしたのもあるのかしら」

「あと10年生きられるなら、頑張ってみても、と
思わないわけではないけど、自分の体力として
それは、無理かなってわかるもの」
「今の体力で、そんな薬を使ったら
それこそ死をはやめちゃうわよ」

「私のわがままをきいてくださる?」
「つらくないように、ね」
「つらい姿をみている家族もつらいの。
娘達がつらいもの」

娘さんは目元を赤くして、でも涙をこらえながら

「おかあさんの生きたいように生きて」
「私は母をかっこいいと思います」
「いいよ、お母さん。できるだけ家で過ごそう。
ご飯つくってくれる?」
「つらいときは、また先生達に相談しよう」

何が正しいとか、判断は難しいです
でも、正確な情報をもとに
患者さんが、自分の生活、価値観、希望に
そって医療を決めていけることが理想ですよね

なかなか、この患者さんのように
考えることは難しくて
医師の言うがままに治療をうけ
結果がそぐわなかったときに
こんなはずじゃなかった、と思う人も
多い

「先生達には感謝しています。緩和ケアを
勧めてもらったときは、なんとなく
見捨てられるのかな、治療したくない、って
言っちゃったからかな、って思ったわ」
「でも、今の時代にがんになってよかった。
こういう医療も必要なのね」
「家族のこともきにかけてもらえるなんて
嬉しい。娘のこと頼みます。それが一番
安心したの」

「私にとって必要な医療をうけたいわ」
「それがわかった」


気丈にみえた患者さんの目元が、すこし潤み
赤かった

またね、と目元をそっとぬぐい
てをふって、診察室をでていかれました

ここから、新しいステージに向かうことにしました

私達は伴走者

彼女の、彼女の家族を支えるために
何がベストか。


しなやかに
俊敏に
フットワークの軽さが
ウリです