胃がんの患者さん

60代の一人暮らし。
これまでなんでも一人でやってきた

なのに

急に自由が効かなくなった
ひとりで生活できなくなって
仕事も難しくなった
眠れない日もつづいた

でも頼る人もいないから、やりくりしてきた

あしあとあしあとあしあと

ある日、救急外来に搬送されてきた

生きるのがいやになって
睡眠薬を多用して、ふらついていたら
近所のひとがみつけ、しらせてくれた

ひとりのようでひとりじゃないよ
よかった

「もういやだ。はやく迎えにきてほしい」
「もう死にたい。治らないのに、がんばる意味があるのか?」
「飯を食べずに、水を飲まずにいたら、死ねるか?とも思ったけれど、のどはかわくし、腹もへる」
「まーらくになりたいだけ」
「以外と死ねないなぁ。まだしぶといなぁ」

ちょっと個性的な、少し怒りっぽくて、それでいて愛敬がある、時々誤解もうける

話す仲間も多くはない

せめて緩和ケアの外来では、ありのままで
いてほしいこと
命はだれのものでもなく、あなたのもの
どう生きてもどう亡くなっても自由

でも

自分で命をたつことはやめてね、と約束

「わかった。じゃあわしからも質問とお願いがある。きいてくれるか?」

何?

「つらいのはいやだ。死ぬときに苦しみたくない。
せめて、それだけたのむわ、な?」

任せて、と

やれるだけのことはやるから
生きる間は生きて、をこちらから約束

「ありがとう。少し安心した。あえてよかったよ」

命は自分のものだもの

一度きりの人生
私も出会いに感謝している

がんばろ


生き抜くだと
思う
コロナを身近に感じ
死は他人事じゃない、と
感じる
だから生きることの意味を考える