お孫さんの面倒をみている60代の膵臓癌の女性の
お話の続きです

救急外来受診後に入院となりました。

娘さん息子さんも病院からの連絡をうけて
慌ててかけつけました。

元気だとばかり思っていた母親

急に入院…

「ごめんね、お母さん。身体がつらいって
気づかなくて。ごめんね、ごめんね…」と、
泣き崩れる娘さん

息子さんはただ呆然と、立ちつくすのみ…

あしあとあしあとあしあと

それまでぐったりしていた患者さん
子供たちをみた途端に
「あなたたち、孫はどうしたの?土日くらい
親子で過ごしなさいって言っているでしょ。
お母さんは、大丈夫だから。早く
帰りなさい」

患者さんに追い立てられるように
娘さん息子さんは病院を後にしました

みなさんはどう感じますか?

冷たいお母さん?娘さん息子さんも、子供なんだし?
患者さんもせっかくきてくれた家族に
そんな言い方しなくても?

あしあとあしあとあしあと

家族の関係は、何もないときには
当たり前で、空気のよう
誰かは誰かのために生きているけど
それも当たり前なので、気づかない

この患者さんは家族のいないところで
こういいました
「あの子たち、気づかないわよね。だって
気づかせないようにしていたもの」
「私はあの子たちが、いま生き生きとしているのを
みるのが幸せなの。孫の面倒はわたしが
すすんでみているのよ。それが私の役割だから」

「役割を失うくらいなら死んだ方がまし。
だから病院にも行かなかったのよ」


役割か…

緩和ケア外来でも、よく患者さんから聞くことがあります
「娘がお母さんは座っていて、と病人扱いするんです。もう必要ない、って言われているみたいで」
「職場で、あなたは病気だから、無理しないで、と。つぎのプロジェクトからはずされました」
「寝ていればいいって言われるけど、そんなこと…
洗濯物くらいたためるわ」

などなど

病気がなくても、自分の存在を脅かされそうに
なると、いやですよね。たしかに、そうだ。


あしあとあしあとあしあと

患者さんにも家族にも伝えました。
無理はできないけど、孫の面倒はみれることや
患者さんの体が辛い時のために、お孫さんの預け先とか考えておく必要があること、など

だれのせいでもないこと
今からが今まで以上に大事な時間であること

お互いがお互いを思いやり、
言葉にしなくてもやってこれたけれど
これからはお互いに声を
かけあいながら、過ごしていくと
より、深い信頼関係がうまれるのかも、と
感じること

消化器内科の医師からは治療方針を相談されました。
治癒は難しい。でも延命目的の化学療法は
検討できる。

抗がん剤治療をして、体力がなくなるくらいなら
治療はしない、と宣言。家族も迷いながらだけれど
本人を支える決断をしました。

体調は回復して、退院しました

続きます


雨の後の花は
いきいきしています