70代男性の膵臓がんの患者さん

妻を早くに亡くされ、娘さんを男手一つで
育ててきました

抗がん剤を勧められてはじめました。
はじめは効果がありました。

だんだんつらくなり、緩和ケア病棟に
入院を希望したい、と話すようになりました。
抗がん剤治療ももうやめたい
主治医とも相談したから、と

娘さんには相談した?

「…」

自分で決めるから、いいよ、と
とにかく娘には迷惑かけたくない
「娘は僕が死んだあと、あの家に住むんです。
だめだ、娘がこれから住む家で死ぬわけにはいかない」

あしあとあしあとあしあと

娘さんにも一緒にお会いしました。
本人にも色々相談しました。
どこですごす?どういう医療をうけたいか

最期は緩和ケア病棟で過ごしたい
むすめさんは?

「どうして、もう何もしてくれないんですか?」
「私は治療をしてほしい。どこで、って
家がいいに決まってるじゃないてすか!」



そうだよね。そうだよね

娘さんはまだ受け入れきれない
お父さんのためになんでもしてあげたい、という気持ち
何より生きていてほしい
一緒にいたい

本人にも、
家で過ごす方法もあるよ、と伝えました

娘さん
「そうしてほしい。できるだけ家で。
母もいる家で過ごさせたい。それに治療だって…」

患者さんの目からポロポロ涙があふれてきました

すぐに、往診医の手配、訪問看護の手配
どうしてものときの緩和ケア病棟の手配

患者さんは、帰り際にいいました
「ありがとうございます、私は娘との
会話に飢えていたんです。娘のきもちを
落ち着かせてから死にたい。娘はまだ
私の体調を受け入れられないんです。
娘とこういう話ができて、よかった」


あしあとあしあとあしあと

家に帰って1ヶ月
娘さんも、介護休暇をとられ
看病にあたりました

娘さんもお別れを次第に意識しはじめ
治療がとはいわれなくなったそうです

訪問看護師さんから伺いました。
静かな旅立ちだったそうです

患者さんの意志を尊重するけれど
そのまわりの家族をも支える必要があること
家族もまた苦悩し、助けをもとめていること
お互いがお互いを思いやること

がんばらないといけません
緩和ケア、がんばらないとね


ずっとそばにいるよ
みえなくても
そばにいるよ