ある乳がんの患者さん。約20年前左側、約15年前右側の手術。その後、しばらくは元気に過ごされていました。痛みが強くなって、乳腺外科から緩和ケアチームに紹介。そこで、多発の骨病変が指摘されました。

当初から痛みが強く、オピオイドでの調整を開始。
でも、ご主人が…

「気力が足りないんですよ。薬に頼っちゃいかんでしょう」
「僕は薬じゃなくて、我慢が必要だと思います」
「甘やかさないでください。薬に頼っていたら弱ってしまう」

そのやりとりを黙ってきいていた、患者さん本人

「まあ、あなたは黙っていてちょうだい。わたしの病気はわたしが飼ってるの。自分で決めたいのよ」
「心配してくれてるのは、わかるわ。でも自分できめさせてね」
「どう死ぬかはどう生きるかだね」

お?どうしてそう思うか、伺いました。

「だっていつその時がくるかわからないと、いつまでも平穏に生きていけるってかんじちゃうでしょ?そうすると毎日を大事にしない気がするの。私は病気がわかってから、いつかは治らない時がくるって感じながら生きてきたのよ」
「服は10着まで、食器も無駄にはかわない、あなたきづいていた?」

夫「…」

「死ぬ日が遠くないってわかるから、毎日大事にできる。がんも痛いのはいやだけど、悪いやつじゃないわよ。持ち主がいい人だからね」、とウィンク。

素敵な方でした。
今でも忘れられない、患者さんとしても、人生の先輩としても、心に残る女性でした。

それから2年半、うまく病と付き合いながらすごしました。最期も穏やかに、やすまれました。

自分でしっかり病と向き合う。なかなかできないことだなぁ…それを支えたい、強く感じました。

生きる