サッカーの日韓W杯が開かれたとき、
街の本屋に勤めていた。
大規模チェーン店の書店ではなく、地方都市の老舗の書店だったので、
どんどん、つぶれていく“街の本屋”への危機感を感じながら、
先行き不安なまま勤めていたわけだ。
でも、いろんな意思決定が、社長から店員みたいな感じだったので、
社長を納得させれば、結構自由にやらせてくれたし、給料を別にすれば、
やりがいのある仕事だった。
それでも、当時は、もうぐだぐだ状態で、いつ、ここから抜け出そうかなんて、
例のごとく考えていたわけだが、
W杯が開かれるまでは、ここに居ようと思った。
サッカーは子供の頃からやっていたし、好きだったから、
日本で開かれるW杯への興奮の中、情報発信の末端の場である書店という職場に身を置きながら、
好きなことをやってやろうなどと思っていた。
さっそく、W杯関連の売り場を任されて、大量に送られてくる各版元の特集号を並べたり、
等身大の可動式中田英寿popを油彩で描いてつくったり
W杯オフィシャルのグッツやマスコットを、入れ替わり立ち替わり持ち寄る業者と交渉したり、
なかなか、楽しかったけど、
実際、宴の後はむなしく、ほとんど店の売り上げに、大きな影響を及ぼさなかった。
巷で叫ばれる経済効果なんて、霞かかげろうのようなものだ。
そして、日韓W杯自体、残念ながら日本国内で、歴史上、強烈なインパクトを残したイベントとみなされていない雰囲気だ。
オリンピックは、たぶん、違うのだろう。
いろんな商売を始める人も現れるだろうし、また、そういうのを始めるのになんの抵抗感もない山師みたいな人もいる。
そうして、世間が、いろいろと高揚して、景気もよくなれば、いいのだろう。そして、それらが、
東北の被災地に還元されて、原発の廃炉作業も、力強く政府主導で確実に行われれば好いだろう。
自分だって、もしかしたら道端で、怪しい侍の絵でも描いて売っているかもしれないw
でも、こころのどこかで、何も変わらないのではないかという、冷めた気持もなくはない。。。
ちなみに、勤めていた書店は、間もなく自分が辞めた後、一昨年、社長が廃業して消えてしまった。
p・s:写真の絵は、震災の数日後に描いた絵、題名は“希望”。青い背景は、津波で流された大地、そこに咲く希望の花。