今年のお盆も田舎に帰らなかった。
と、いうか、正確に言うと両親が住む実家に、なんだけど。
自分には田舎や故郷とよべるものがない。
生後一年もたたないうちに親の転勤で転々としてから、
故郷なんてものを、ほとんど意識したことがない。
思い入れはある。たとえば高校野球なんかで、応援する場合は、過去に棲んだことがある土地の、よりよい思い出がある場所が優先される。
だから、郷愁と言う甘い言葉も、そこから逃れられない息苦しさや、煩わしさみたいなものも、
わからない。
転々とした土地での思い出は、ときに甘く苦く、一瞬で消えうせる陽炎のようなものだ。
たとえ、夢破れて、帰らざるを得なくなっても、帰ることのできる場所があるのならば、
それは、それで幸せなのかもしれない。
写真の絵は、例のごとく、先日中目黒で展示した作品の一つだけど、
題名は“郷愁”とつけた。
マンドリンを奏でているのは自分だ。
実際の光景ではない。背景は昭和の古い建物にした。
たぶん、郷愁を感じさせるというのはこんな感じなのかなっと、
郷愁を感じることのできない人間が描いた作品だ。F4 パステル。