私は高校を卒業してすぐ、社会に出た。

早く社会に出たかった。

大人の世界に行けば、心ない悪口を言われたり、怯えるような事はなくなるんだ。と、希望を持っていた。

仕事は楽しかった。
職場も女の人が多く、人間関係も良かった。
毎日が充実していた。

私は1番年下だった事もあり、周りから可愛がられた。

高校生になった頃から、コンプレックスだった自分の顔を隠したくて、必死にメイクの練習をしていた成果もあり、この頃から、周りで可愛いね。と言ってくれる人が出来てきた。

けど、だからといって舞い上がる事もなかった。

男の人から見れば、私はブスで気持ち悪いんだ。と、思っていたから。

社内で男の人の笑い声が聞こえるだけで、自分を見て笑っているんだ。と、体がビクッと反応する事は、まだあった。


そんな中で、大手企業の正社員だった彼と出会った。
私は契約社員として、彼の会社に出向しており、社員の彼と、下っ端の私が、仕事で会話をするなんて事は、まずなかった。

その為、彼の存在を知ったのは、仕事をし始めて一月ほど経った頃だった。

私が重い荷物を運んでいた時に、たまたま彼がドアを開けてくれた。
それだけの事だった。

彼は優しく声をかけてくれて、とても優しい顔で笑ってくれた。

細身で、スーツがとても良く似合っていて、スマートな立ち振る舞い。
そして何より、心がじわっと温かくなる感覚があった。
この人は絶対に、心優しい人だ。温かい人だ。って、直感で分かった。
そして一瞬で、その人を。ただドアを開けてくれた人を。
好きになってしまった。

あとで周りの人に聞くと、彼はやはり私が想像していたとおりの人で、とても優しい人だと。評判が良かった。

その日から私は毎日彼を目で追うようになった。

彼を見ていると、とても癒された。

何故か、自分の心の中の、固く凍ってしまっていた部分が、溶け出していくような感覚があった。

その後も事あるごとに、彼と遭遇する機会が増え、ファックス機の前で困っていた時にたまたま彼が通りがかって助けてくれたりと、彼も私の顔だけでも、覚えてくれるようになった。

目が合うと、笑顔を向けてくれるようになった。

そして私はだんだんと、欲が出てきてしまった。

彼を見ていると、とても幸せな気持ち、温かい気持ちになれる。
私は彼がそばにいてくれれば、もう2度と。過去に怯えなくて済む。忘れられる。って、思うようになった。

現に私はだんだんと。いつの間にか、男性に怯える事がなくなっていた。

不思議と、自分に自信を持てるようになっていた。
自信といっても、男の人に対して、普通に会話をしたり、笑ったりしても良いんだ。という、本当に普通の事だけど。

それでも私にとっては、かなりの進歩だった。

彼のおかげだと思った。

彼さえそばにいてくれれば、私はどんどん変われれると、本気で思っていた。

そして、彼に突然。告白した。

仕事帰りに、周りの目を見計らってメールアドレスを渡した。

その日は連絡はこず、2日後にメールをよこしてくれた。

舞い上がった私はすぐに、好きです。と告げてしまった。

答えはノーだった。

彼には、同じ社内で付き合ってる彼女が、ちゃんといた。
彼女は彼と同じ大手企業の社員で、彼の同期。
一流大学を出ていて頭も良く、とても華奢で品の良い女性だった。

私とは全く違う。
勝ち目はなかった。

でも、悲しかった。悲しくて悲しくて、いくら泣いても泣き足りず、彼の事が大好きで大好きで、結局、同じ社内にいる頃は、ずっと好きだった。

失恋してからも、彼の態度は優しく、逆にそれが辛かった。
でも、そんな彼が、彼女一筋の優しくて誠実な彼が、大好きだった。

彼と会わなくなってからも、結局ずっと好きだった。

私の人生の中で、彼以上に、心から、死ぬ気で好きになれる人は、もう現れないと。
未だに思ってる。

今でも彼を思い出すと、気がつけば涙が溢れてる。

彼とは恋人にもなれず、何もなかったけど、彼と出会った事は、私の人生でとても意味のある出会いだった。

私の心を救ってくれた彼には、今でも感謝している。
彼が今も、心から幸せでありますようにと。
本気で思ってる。

*当時彼を想ってよく聴いていた歌
・STEP you(浜崎あゆみ)
・Story(A I)
・ここにしか咲かない花(コブクロ)
・粉雪(レミオロメン)
・奏(スキマスイッチ)
・ただ会いたくて(EXILE)
・運命(倖田來未)
・hands(倖田來未)
・flower(倖田來未)
・you(倖田來未)
・夢のうた(倖田來未)

*初めて聞いて彼を思い出して号泣した歌
・最愛(KOH +)
・NAO(HY)