百田尚樹さんの新作、「フォルトゥナの瞳」を読ませて頂きました。
百田さんの作品は、これで2回目です。
突然ですが、あなたは他人の『死』が見えたらどうしますか?
主人公:慎一郎は、『死』が迫っている人のことが透明に見えると言う、「フォルトゥナの瞳」を持っています。
それは、言葉にするのが簡単な割に、とても重大で厄介な能力なんですよね。
この人に死が迫っていると分かれば、「助けてあげたい」と考えるのがヒトの性。
いかし、定められた運命を曲げることはとても罪深いことであり、きちんと代償を支払わなければなりません。
慎一郎が誰かの運命を曲げることにより、仕事をなくし行き場を見失った死神は、その大きな鎌を慎一郎に向けます。
つまり、誰かの命と引き換えに、自分の寿命が削れるんです。
慎一郎が、自分の身を守るのか、名前も知らない赤の他人を救うのか、もがき苦しみながら迷う様は、どこか他人行儀ではない気がしました。
わたしもこのような究極の選択を迫られたら…
最後の方、葵が涙した場面で、結末は予想することが出来ました。
その通りに事が進み、エンディングを迎えましたが、なんだかすっきりとした読後ではなかったです。
しかし、読んで後悔するような物語ではありません。
もしわたしが慎一郎の立場だったら…
そんなこと、考えたくもありません。
しかし、どうしても考えずにはいられないほどに、この小説は慎一郎の心情をリアルに描いていました。
慎一郎の自信のなさ、ネガティブさには、度々イライラさせられましたが、自分に絶対の自信がある人なんてそうそういないというのが現実だと思います。
それでも、最後に慎一郎がとった行動は、わたしには絶対真似できないと思いました。
真似できないほど、勇気のいる行動だと思うから。
この小説のカバーの内側に、百田尚樹さんが一筆書かれていました。
この本を手にとった瞬間に
あなたの「運命」が、
変わるかもしれません。
まさに、その通りだと思います。