辻村深月さんの小説は、おそらくこれが初めてです。


7つの短編が入った小説なのですが、ひとつひとつの物語はさくさく読めるのに、次の物語へ行こうとすると何故か一呼吸いれてしまい、また別日に読む…と言った感じで読み進めていました。

結果、そんなに厚くないこの小説を読むのに、4ヶ月近くかかりました。


読み終えて第一に思ったことは…

最後以外の物語の構成が、全て似ているということ。

あくまでわたしの感想ですが、何か事件(ハプニング)があり、結果ほっこりとして終わる、と言うような。

悪い意味ではなくて、ちゃんと全ての物語、感動しました。


構成が同じように感じたのはホントですが、「これって等身大だよなぁ」と思ったのもホント。

7つの物語に共通して言えるのは、「自分の身に起きてもおかしくない」と言うこと。

物語の中に入り込みやすいから、その分登場人物への感情移入もしやすかったです。

いらいらするポイントも、心がほわっとあったかくなるポイントも、ちゃんと分かる。

どうやって表現していいのか分からないような感情も、きちんと書かれていました。


そりゃあ、全部の家族がみんな同じ、と言うわけではありません。

でも、根本にあるものはやっぱり変わらないんじゃないかなぁ。

だからきっと、誰が読んでも「家族ってこうなんだ」って感じると思います。

「こうあるべき」ではありません。



家族の定義ってなんですかね?

いつも一緒にいること?血を分け合っていること?戸籍の問題?

どれも、正しいと言えば正しいし、違うと言えば違いそうです。

的確な言葉を探して、「これだ!」なんて言うつもりはありません。

でも、この小説に書かれている7つの家族像が、答えなんだと思います。

こういうのを、家族って言うんじゃないかなぁ。


家族だから許せることがある。

逆に、家族だから許せないことがある。

分かち合いたいこともあるし、譲れないこともある。

友だちとも恋人とも違って、それ以上でも以下でもない。



心をほわっと落ち着かせたいときには、おすすめです。

短編集だから、さくさく読めますよ。

スクールカーストって、嫌な響きですよね。

こんな制度に名前を付けちゃったら、それが当たり前になってしまいそうな気がします。



マキは、「旧」女王。

転校生のエリカが、「新」女王。

ふたりの、「女王であるプライド」は、髪飾りによって上手く表現されていました。


マキの女王の証は、ハート柄のパッチンどめ。

エリカの女王の証は、リボンのバレッタ。


「新」の方がなんとなくオシャレな感じがして、優位に立っているように見えます。



新旧女王の罵り合いは、大人から見ればただの、子どもの口喧嘩。

子どもなんだから、元気があれば喧嘩くらいする。


しかしそこにあるのは、登場人物の背丈を低くしただけの、大人と同じ世界。

自分のクラスでの位置や、教室内の雰囲気、クラスの人間関係などを客観的に捉える能力は、まさに大人と同じものです。


きっと、異常な事態を「子どもの喧嘩」で済ませてしまう大人が多かったから、

面倒なことに目を瞑る大人が多かったから、

子どもたちが自分たちに見せる姿を微塵も疑わない大人が多かったから、

この小説の中の子どもたちの結末は、こうなってしまったんだと思います。




そーんなことを考えながら読んでいたら…


ん?

ん??

ん???


きっとこの小説は、読み返した数が、騙された数。

伏線をいろんなところに忍ばせて、何回も何回もページを捲る手をとどまらせてしまう。

わたしは何回、騙されたでしょう。分かりません。



マキも、エリカも、

どちらも、女王の座に君臨した、幼き怪物。


でも、本当に怖いのは、誰だったのでしょうか。

きっと、四年一組のクラスメートは、気付いていないんじゃないかなぁ。

朝井リョウさんの、「学生時代にやらなくてもいい20のこと」を読ませて頂きました。



内容は…まさに、タイトルの通りです。

読んでためになることはありません。

断言してしまって、ごめんなさい。

でも、ありません。


ただただ、ひたすら面白い。

読み進めていくうちに、にやっとしてしまうような。

思い出して、またにやっとしてしまうような。

だから、人前で読むことはオススメしません。

自分の部屋で、ひとりで読んでください。



どっかの小説とか、なんかの歌の歌詞とか、

「あの頃の俺は、何でも出来る気がした…」

なんてフレーズを目にしたことが、何回もありますが…


まさに、それです。


朝井さん、なんでもやってます。

その行動力には脱帽します。


「何でも出来る気がする」って、裏を返せば「何も考えずに行動する」なような気がします。

はたから見たら、「馬鹿だなぁ」の一言だけど、本人たちには特別な意味のあること…のようには思えません。

やっぱり馬鹿なんです。

でも、みなさん経験ありますよね?

「あのとき、なんであんなことしたんだろ?」って、あとになって馬鹿だったと気付くことが。

後悔とはまた違います。

馬鹿だなぁって思って、ふふっと笑ってしまうような、そんなこと。


おそらくこの本には、等身大の大学生の姿がぎゅうぎゅうに詰め込まれているんだと思います。

この本は、何も特別なことは書かれていません。

全国の大学生をランダムに選んでも、きっとにやけるような物語があるでしょう。

朝井リョウは作家で、文章力がある、と、何か特別なことがあるとしたら、それだけです。


12年分の学を、馬鹿な行動に変換してしまう。

それが、大学生だと思います。



勉強とか、人付き合いとか、仕事とか、

何かに疲れたら、この本を読むことをオススメします。

肩の力が抜けますよ。


悩んで悩んで、

どうしたらいいか分からなくなったら、この本を読むことをオススメします。

多少のことは「まぁいいか」で済みますよ。


脱力しすぎに注意ですが、無駄な時間を過ごすのにはぴったりな本だと思います。