全身の司令塔としての腎臓 | 腎臓内科医のつぶやき

腎臓内科医のつぶやき

気軽に腎臓病について知っていただく機会を作りたいと思って、2010年から月1回の腎臓病教室を始めました。教室でお話した内容や、腎臓関係のマメ知識をお話できたらいいなと思っています。2018年12月にyahooブログから引っ越ししました。

NHK人体で特集された腎臓
今日は少しだけ腎臓と全身の関係をお話しします。


腎臓は、人間が生きていく上でできてくる老廃物を尿として捨てます。
そのため私たちの体は常に新しい状態を維持し元気に過ごせるわけですねラブラブ

ほかには、レニン・エリスロポエチン・活性型ビタミンDなどに代表されるいろいろなホルモンの体に提供する臓器としての大切な役割もあります。

これらを行っている腎臓は、つまり、体内の環境を調節する臓器といえます。
実際は腎臓だけでは機能が果たせないので、各臓器に指令を出して調節する指令塔の役割を果たしています!!



では各臓器と腎臓の関係をみてみましょうキラキラ




 ヒヨコ   ヒヨコ   ヒヨコ   ヒヨコ   ヒヨコ   ヒヨコ  



腎臓と心臓の関係

『高血圧』・・・沈黙の殺し屋ともいわれていて、各臓器・寿命に関係します。
腎臓は血管の塊です。腎臓に血液がしっかり流れることで、腎臓も元気でいられるし、老廃物も捨てられるので体にもいいですね。
でも、腎機能が落ちると、腎臓にいく血液量が減ります。
きちんと血液が欲しい腎臓は、血圧をあげることで腎臓に血液を運ばせようとします。
腎機能が落ちると血圧があがる:これが『腎性高血圧』です。

逆に高血圧は腎硬化症という病気を引き起こし、腎機能を低下させます。
また高い血圧は蛋白尿を増やし、結果腎障害を加速させます。


高血圧、よくないですね~アセアセ
そのため、高血圧治療ガイドラインでは
蛋白尿がある腎臓病患者さんの血圧管理目標は
診察室での血圧が130/80mmHg未満
家庭血圧は125/75mmHg未満と、低い目標が設定されています。





腎臓ともっとも関係が深い臓器といえば、心臓です。
心臓は全身に血液を送るポンプの役割をしていますね。
心臓自体の病気でポンプ機能が落ちることもありますが、心機能がそれほど問題なくても ポンプ機能に障害がでる=心不全となる ことがあります。
その原因の一つが、腎臓です。

腎機能が落ちて尿に十分水分と塩分を捨てられなくなると、体に水があふれます。
多すぎる水のせいでポンプがうまく働かなくなってしまいます。

そうすると、腎臓に血液が十分まわらなくなり、さらに腎臓機能が落ちていく・・・という悪循環になります。

また、『腎機能が落ちる』と、それだけで心臓の病気を発症しやすくなることも知られています。


長生きのためには、腎臓も心臓も大切にしないといけないんですね!!




うさぎ   うさぎ   うさぎ   うさぎ   うさぎ   うさぎ



腎臓と血管の関係

血圧が高いと血管も腎臓も痛むので、高血圧が一番関係が深いです。

そのほかにも関係していることがあるんです。。。

血管の石灰化です。骨みたいに固くなっちゃうことをいいます。

血管は何層もの膜が重なってできています。
そのうち中膜が、石灰化をおこし動脈硬化がどんどん進んでいってしまうことがあります。

腎機能障害があると進みやすく、その原因の一番は『リン』です。

栄養指導を受けている方はよくご存じかと思いますが、
リンは食物に含まれていますので、食べることで体に入ります。

体内でとても大切な仕事をしますが、多すぎると毒になるので、一定量を超えないよう腎臓が調節しています。

でも、腎機能が低下してくると、体内にリンがたまっていってしまいます。。。

透析を受けている方は特に注意しないといけませんが、この頃は透析・移植を受ける必要がない段階の慢性腎臓病の方も十分注意しないといけないといわれています。


リンの制限については、後日お話しすることにして。
リンを減らさなきゃと思うと、どうしても食事量が減ってしまいます。
そうすると筋肉が減って、この前お話ししたサルコペニアなどの病気になりやすくなります。

栄養士さんとよく相談して、無理ない範囲で食事療法を行ってくださいね!!
食事療法だけではどうにもならないときは、薬に頼るものいい治療かと思います。

しっかり食べて、元気に長生き爆  笑 がいいですねハート




グッ   グッ   グッ   グッ   グッ   グッ



腎臓と骨の関係

腎臓は体内のカルシウムやリンなど骨ミネラル代謝を主に担う臓器です。
腎機能が低下すると、活性型ビタミンD3が不足して、リンの上昇と相まってカルシウムが低下します。

すると、副甲状腺ホルモンが過剰に分泌されカルシウム値とリン値を正常に近づけようとしますが、骨を使い調節するので骨がスカスカになってしまいます。
太ももの骨折は腎機能が低下した方で頻度が高いです。
特に透析治療を受けている方では、発症頻度は数倍~10倍もあがるといわれています。

リンの値を正常に保つことで、ドミノ式に悪化するこれらの病態の進行を遅らせることができます。
食事療法のほかに、内服治療が必要となることは少なくありません。




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腎臓と骨の関係

骨の中、骨髄で血液は造られます。
この造血を制御するのが、腎臓で作られる造血ホルモン:エリスロポエチンです。

さまざまな病気で貧血になりますが、腎臓の障害で起こる貧血を腎性貧血といいます。
腎臓が弱っていると、血を造る指令となるホルモン:エリスロポエチンを産生できなくなるんです。
 
貧血は腎臓にも心臓にも肺にも負担をかけます。
腎性貧血の際は、注射製剤での治療が必要となります。
痛い注射は嫌!!と、言われます。
製薬会社さんががんばって開発しているところで、飲み薬はあと数年で実用化になるみたいですよアップ




以上、今日は全身の司令塔である腎臓についてお話しました音符