今日はめずらしく1日に2回目のお話しです
なぜかというと・・・
2月の腎臓病教室では
医師のところで
『検査データの見方』
と
『腹膜透析について』
をお話する予定ですが、
検査データについてなかなか短くまとめるのが難しいんです。
毎年長くなっていく一方で・・・
というわけでこの場をお借りして(というのも変ですが)
『リン』
について、少しお話しします
一般的に『リン』は
値が高いと
透析患者さんの死亡率を高めたり、脳血管心疾患を発症しやすくなると
さまざまな研究でわかっています。
2011年のPalmerらの報告によると
透析をしていない腎臓病の方でも、透析患者さん同様
リンが1mg/dl上昇するに伴い総死亡のリスクが29%上昇することが示されました。
色々な結果に影響を与えてしまう因子を取り除いたところ
なんと
リンが1mg/dl上昇するに伴い総死亡のリスクが35%上昇することが示されました
(心臓や血管に関係する死亡に関するリスクは十分な解析がなくわかりません。)
腎臓がどれくらい長持ちするか:腎機能予後についての報告もみてみましょう。
SchwarzらやTangriらは
血清リンの高値が腎機能の廃絶:腎死リスクと関連する
血清リンの高値が腎機能指標:eGFR変化率と関連する
と示しました。
リン値が高いと早く腎機能が低下するんですね
気を付けないといけないですね
腎移植を受けた方でも同じような報告があります。
Mooreらや、Sampaioらは
血清リンの高値が
総死亡や、移植腎喪失のリスクの上昇と関連する
と示しました。
一般の住民でも
リン値の上昇が
心血管病の発症や、慢性腎臓病の発症・進展に関連がある
ことが報告されています。
(Dhingraら、O'Seaghdhaら)
基準値内でも高値に傾いていると予後に悪影響を与える
ことも示唆されています。
では沢山食べても、リンが低ければいいのでしょうか
リンを吸着して体内のリンを減らすリン吸着薬を服用することで
総死亡の危険性や、腎臓病悪化が抑えられたという報告もあります。
以前もご紹介しましたが
カルシウムを含まないリン吸着薬が透析をしていない患者さんでも使用できるになりました。
食事療法と内服薬を上手に使って
リンとカルシウム
仲良くいい値に保ちたいですね
と、
リンは低く抑えるのがいいでしょうという流れでお話ししてきましたが、
透析が必要となる前の保存期の腎臓病患者さんでは少し違う報告もあります。
『必ずしもリンの摂取量が少ないほど元気で長生きできるわけではない』
という大規模観察研究もあります。
どちらがいいのかわからなくなってきますね
いつものことですが
過ぎたるは及ばざるが如し
リンは高すぎず、低すぎず
まんべんなく栄養を摂るようにしてくださいね
今回は腎臓学会のCKD診療ガイドラインからお話ししました。