准くんのおうちのボンボン時計には
こびとがふたり住んでいるけれど
時計の中にベッドはひとつきり
熱くて寝苦しい夜も、雪の降る寒い朝も
泣きたい時も、喧嘩した日だって
ひとつのベッドに並んで、くっついて
いつもふたり一緒に眠るんです
12月のある朝のこと
今日もふたりは仲良く並んで…並…ん…
えーと…
並んではいないようね
お布団からはみ出した頭はひとつ
…もしかして、重なってる?
お布団の中で、何かがモゾモゾ動き始めました
「…ん…けーん……」
聴こえてきたのは、蕩けるような
甘い甘いキャラメルボイス
あら、やっぱり
お邪魔だったかしら
「あ?」
お布団の中から、剛がひょっこり顔を出しました
眉間にシワを寄せて、周りをキョロキョロ見回しています
ふふ…大丈夫
誰も見てないし、聞いてないわよ?
私以外は
剛は部屋の中に誰もいないのを確認すると、パッと布団を抜け出しました
ボンボン時計のフタを開け、誰もいないリビングをぐるっと見回して
またすぐにフタを閉めて、ベッドに戻って首を傾げました
「あれって、夢…だよな」
そう呟くと、左手をジッと見つめて、今度は何か考え込んでいるよう
…ははん。読めたわ
あなた、また何かやらかしたのね
で、健が怒って家出。どう?当たりでしょ
(は?「また」ってなんだよ)
まさか忘れちゃったの? →コレな
(るせぇ…アイツさっきまで、ココ居たし)
あら、そう
じゃあ、どうして…
(さあ?…すぐ戻ってくんだろ。ふわぁ~…もうちょい寝よ)
不安げな顔を隠すようにワザと大きな欠伸をして、剛はお布団の中に潜り込みました
(さみぃ…)
お布団の中は
まだほんのり温かかったけれど
ひとりのベッドはなんだか寒くて寂しくて
健の代わりに毛布をギュッと抱きしめて
剛はまた目を瞑りました