ユア・ソング〜君の歌は僕の歌〜64 | GIN@V6〜since20xx〜

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You've got the best choice!!

 

「…ふぁ~……おはよ」


 

キッチンに立ってた長野くんの肩がビクッと跳ねた



あ、悪ぃ。驚かしちゃったか?

…そんなデカイ声出した訳でもねぇんだけどな



「お、おはよう剛。よく眠れた?」



長野くんが振り返る

 


……



 

長野くんて大体いつも笑顔なんだけど

今日はなんだか…


胡散臭いっつーか、無理やり笑おうとしてるっつーか……気のせいか



 

「ご飯、出来てるよ。健くんの分も」


 

「おっ、サンキュー」



ふーん…それで早く来てくれたのか

有り難いけど、もうちょい静かにやってくれ…とは言えねーな


 

「先、シャワーしてくる」



あ…せっかくだから、温かいウチにメシ食ってろって言っとくか


寝室を振り返る


アイツまだ着替えてんの?遅っせー


「ちょ、けーん!




カコーン!




長野くんが持ってたお椀を落っことした


拾おうとしてしゃがんだのに、お椀が手につかずに俺の足元まで転がってきた



プッ

長野くん、そんな慌てなくても…



「けっ、健くんと一緒にシャワー…するの?」


 

…は?

なに言ってんの?



長野くんの問いは無視して、拾ったお椀をカウンターに置いた

 


「おい、けーん」



寝室行こうとした俺の腕を、長野くんが掴んで引き止める



「…なに?」



目、泳いでんだけど

…マジでどーしたの?



「あの、俺、健くんに話があって…」



…あ…そう


 

「じゃ、先に飯食ってろって言っといて」

 

長野くんが手を離して、俺はバスルームに向かった



「ふぅ…」

 

背中で聞こえた長野くんの溜息



…ホント、大丈夫?


どっか具合い悪いんなら

無理して早く来なくていいのに



 






着替え終えてから、ベッド周りに脱ぎ散らかした服やなんかをザッと片付けてた



コンコン

 

「健くん、入るよー」

 

長野さん?

 

「あー…今、そっち行きます」


こんなの見られたら恥ずかしいもんね

剛達が出掛けたら、ちゃんと片付けよう

 



 

リビングに出ると、テーブルの上には二人分の朝ご飯が準備してあった



「わぁ、これ長野さんが作ったの?」


 

「剛、先に食べてていいって。どうぞ」


 

席に着くと、長野さんがホカホカのご飯とみそ汁をよそって俺の向かい側に座った

 



ホント、美味しそう


…あ、そっか

兄貴もだけど、この人も料理学校行ってたんだもんね


 

「いただきまーす」


んー!美味しい!


『兄貴の味とはまた違って、でも凄く美味しい』って言おうとして顔を上げた



一瞬目が合った長野さんが、メッチャ真顔で


思わず、出かかった言葉を飲み込んだ

 


「ん?どうかした?」



テーブルの上に両手で頬杖ついて

長野さんがニッコリ微笑んでる



いつもと変わんない

さっきのは気のせい…だよね


 

「ご飯、すごく美味しいです」



俺が言ったのを聞いてたのか聞いてなかったのか



「あ、そうだ。言うの忘れてた」

 


何かを思い出したように、長野さんがパチンと手を叩いた


 

「マンションの下でお兄さん待ってたよ。もしかして、まだ仲直りしてないの?」

 


え?


兄貴が…来てる?

 







 

 

寝て起きたら、酔っ払って言った事なんか全部忘れてるだろうと思ったのに


 

代表…



「縁切ってやるから好きにしろって、健に言っとけ」なんて…


そんな突き放した言い方しなくったって


 

しかも、こんな手紙いつの間に書いたんだよ

達筆すぎて、果し状にしか見えねぇ



嫁に出すっつったじゃん

どうせなら、笑顔で嫁に出してやろうよ

 


当座の金と、新調した車まで準備しちゃって

やってる事甘々なくせに

 

 

 

…あ、ちょっと待て


縁切るって事はだよ?

俺も坊ちゃんに会っちゃダメって事か



…マジで?


じゃ、誰が坊ちゃん守るんだよ


しかも、ここら辺は俺らのシマと城島組のシマの境目


縁切ったとはいえ、坊ちゃんが危ない目に会わねー保証は無ぇ



……


 

あー、ダメだダメだ

そんなの絶対無理




…やっぱ

俺が陰ながら坊ちゃん守るしかねぇ




背中で自動ドアの開く音がした



坊ちゃんかな?





振り返った俺の後頭部に


激痛が走った







ユア・ソング〜君の歌は僕の歌〜64