PとMK(Pと打上花火) | GIN@V6〜since20xx〜

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You've got the best choice!!

 
 
 

今日はなんだか交番が立て込んで

 
 
落し物だの、迷子だの、引ったくりに
今度は何?痴漢?
学校が夏休みの所為か?これ
 
 
ハイハイ、分かった分かった
話聞くからまぁ座って
 
 
 
ったく…
ゆっくり健のこと考える時間もねぇ
 
 
そうこうしてるうち、もう夕方か
 
 
「お先ー」っつって、井ノ原さんが帰った
と思ったら…また来たよ。今度は誰…
 
 
 
「あ…」
 
コイツ…
 
「え?あっ…剛…だよね?」
 
何処のおネエちゃんかと思ったら、高校ん時の同級生。

…で、元カノの友達
 
 
 
「おう、久しぶり。どしたの?」
 
 
「え?あ、あぁ…あのね、財布落としちゃったみたいで。届いてないかな?」
 
 
今日は色々あったけど、お財布、お財布……
 
書類めくってみるも、該当はなかった
 
 
「今んとこ届いてないけど、どこら辺で落としたか分かる?」
 
 
「思い当たるトコは、全部探したんだけど…」
 
 
「じゃ、この書類書いといて。見つかったら連絡すっから」
 
 
机挟んで向かい合わせに座って、書類を書くのを黙って見てた
 
 
高校卒業してから一度も見てねぇから、随分変わった気がする
 
名字はまだ変わってねぇんだな
 
 
化粧して、マニキュアして…綺麗な爪
 
 
んー…

どっちかっつーと、俺は健のキチンと短く切り揃えられた爪の方が好きだけどな
 
 
洋服も、なんか大人な感じでおしゃれになったな。昔は無理して大人っぽくしてた感あったけど、年相応っての?
 
 
まぁ……
うちのオシャな健には負けるけど
 
 
フッ…
なんで俺、いちいち健と比べてんだ
イカれ過ぎだろ
 
 
 
「剛…変わんないね」


ふと書く手が止まった
視線だけ上げたソイツが、上目遣いに俺を見てる


「昔と変わらず、カッコいい」

 
「ふふっ」て笑うと、また視線を落として書類を書き始めた
 
 
は?
カ、カッコいいとか…やめろって、照れんだろ
 
 
「お前は…何か変わったよな。大人になって綺麗になった気がする」
 

 
ふと視線を上げたその先に

 
あ……健


いつの間に…つか、お前…いつから居たの?

 
入り口んトコに立ってた健が、目も合わせず何にも言わずに、反対向いて歩き出した
 
 
「ちょっ…健!」
 
追いかけたいけど、交代のヤツが来るまで俺一人だから、交番は空けらんない
 


なんか変な感じだったよな
また面倒くせぇ事になんのヤダし
 
あーっ、どうしよ
 
 
 
「あれぇ?健ちゃん寄ってかないの?中に森田居なかった?」

 
あ…井ノ原さんの声
 
 
はぁ、助かった…
井ノ原さん、すんません。身柄確保して、こっち連行願います
 
 
井ノ原さんに肩組まれた健が交番に戻ってきた
 
 
ナイスキャッチっす、井ノ原さん
ベストグローブ賞モンです

 

 

俺らと健の様子を見て、井ノ原さんは何となーく事態を察してくれたらしい


「俺はちょっと忘れ物取りにね…あれ?落とし物の届け出?ほら、健ちゃん、落とし物だってさ」
 


健の肩ポンポン叩いてフォローしてくれてる
あざっす!
 

 
「ねぇ剛、書き方これでいいかな?」
 
書き終えて差し出された書類に目を通した

 
「オッケー。じゃあ見つかったら連絡すっから」
 


「ん?森田、知り合い?」
 
俺と同級生を交互に指さしてる井ノ原さん
その横でムッとしてる健


…何だよ
やましい事なんか、何もねぇからな

さっきちょっと…
『綺麗になった』っつっただけじゃねぇか
 

「高校の同級生っす」
 
嘘ついてねぇぞ
別に、元カノの友達までは言わなくていいだろ
 

同級生って紹介された本人は、井ノ原さんと健に向かって軽く会釈して、俺を見た

…紹介してくれってか
はぁ…しゃーねーな

 

 

「同僚で先輩の井ノ原さんと……高校生の三宅くんだ」

 

 

健?んな顔するなって

これ以上、俺に何て言えってんだ


『俺の健』とかか?

どっかの外食チェーン店じゃあるまいし

 


 

「じゃあ、連絡待ってるから。よろしくお願いします」



交番から出かかって立ち止まった奴が、くるっと振り向いて俺を手招きした


 

ま、まあ見送りぐらいなら…してもいいよな


健をチラ見しつつ、交番の入り口に立った

 


「ねぇ、明日、花火大会あるじゃん。良かったら…一緒に見に行かない?」

 

…何だよ唐突に
 
「俺、仕事。無理」

つか、今の状況じゃ仕事じゃなくても無理


「そっか。久々に同級生で集まるからさ。剛も逢いたいんじゃないかなーと思ったんだけど」

ちょっと含みのあるような言い方して、ふふって笑った
 


「ふーん。そっか残念だな」

サラッと返したものの
もしかして…アイツも来るって事か?
その…元カノ
 
 
「お巡りさんだもん、会場には居るんだよね?」
 

「ああ…まぁ、一応居るけど」

 

「分かった。じゃーねー!」

 

 
手を振って、後ろ姿を見送った

 
 
あー…さっきから背中がチクチクチクチク
 
別に…何もないからな
誤解とかしてんじゃねーぞ
 
 
振り返ろうとして
背中から聞こえた、素っ気ない健の声

 
「綺麗な人だね。あ、『綺麗になった』んだっけ?」



…やっぱソレ、聞いてたか


「明日もバッタリ会っちゃったりして?」



井ノ原さんが肩くんできて
ニヤニヤしながら俺の脇腹を突っついた


「なになに?お前もアバンチュール?」

 

…やめてくれ
 

そのくだりは終わったから

もういいよ