PとMK(Pの恋路と井ノ原パイセン)1 | GIN@V6〜since20xx〜

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You've got the best choice!!

 

「なぁ、森田」

 

あ?なんすか?井ノ原さん

 

「お前、この間バイク乗ってた?」


 

「あぁ、従兄に借りたヤツか。ゴールデンウィークの時っすよね」



 …あれ?どっかで会ったっけ?

 


「後ろ乗っけてたの健ちゃんだよな」

 

「そうですけど……」



あちゃー…目撃されてたか

どこですれ違ったんだ?



「どっか行ったの?」


「ちょっと…海まで…」




「こんにちはー」

 

「あ、健ちゃん。楽しかった?海」


 

井ノ原さん…いきなり話振ったって、訳分かんないだろ

 

健も「え?」なんて戸惑った顔して

俺の方チラ見してるし


いいよ…それ無視していいから

早くこっち来い



顎で呼んで、井ノ原さんに背を向けた

 

健にだけ聞こえるよう、小さい声で耳打ちする



「バイク乗ってたの見られたらしい」

「えっ?どこで?」

「分かんねぇ」

「駐車場とかだったらマズイよね…」

 



「2人で何コソコソ喋ってんだよ」

 

慌てて井ノ原さんの方に向き直った


 

「楽しかったか海?2人で」

 

「…まあ楽しかったよ…なぁ?」

「うん…そうだね」

 


細い目を更に細めて、井ノ原さんが「そーかそーか」なんて頷いてる



「で?写真とか撮ってねぇの?」



ちらっと健の方見て、別にいいよなって目配せした


「何枚か撮ったよな。なぁ?」


健もちょっと考えて、スマホを取り出した



「うん。あんまりたくさん撮ってないけど、見る?」


 

井ノ原さんに向けて写真スライドさせてく



「ふーん、楽しそうに写ってんじゃん。2人でよく遊びに行ったりすんの?」



「いや…そんなには…なぁ」

「そうだね…休みが合えば?かな」



俺は土日が休みって訳じゃないし

平日はコイツ学校だし

 

つか…何?このジワジワ責められてる感

 


「で?海の後は、どっか行ったの?」


 

えっと…


「夕日を…見てたかな…」

どこでなのかは、言えませんけど


 

「海に沈む夕日?お前ら青春してんじゃん!」



何か一人で盛り上がってるけど…

なんなの?

 


「健、そろそろバイトの時間じゃね?」


本当は、まだ全然早いけどな


「後で迎え行く」


健にコッソリ耳打ちした


 

「ホントだ。そろそろ行かないと。またね、井ノ原さん」


健も察して、いそいそ交番を出て行った


 

ふぅ…


なんか…疲れた

 


 



「森田さぁ、前から聞こうと思ってたんだけど」


…今度はなんなんすか

そんな改まった顔して

 

小芝居なら付き合いませんよ

俺、めっちゃ疲れてるんで

 

 

「…お前さぁ、健ちゃんの将来とか考えたことある?」



は?

将来って……え?



「そんな…先の事、考えてないですけど」
 

「ちょっとは真面目に考えてやれよ」


 

え?

ちょ、もしかしてバレてる?俺らの関係

やっぱ駐車場でハグしてるのとか、見られてたのか?

 


「今、一番いい時だけどさ」


「…一番かどうか分かんないけど」


まあ…幸せです。リア充ってやつです


 

「見りゃ分かるよ。めっちゃ楽しそうだもん」

 

 
…そっか、ちゃんと見てくれてたんですね。その細い目で、俺らの事



「でも実際、高校生って忙しいだろ」


あー、そうなんすよね


「学校祭の前に体育祭があって、その後テストっつってたかな」


 

ホント、行事多過ぎんだよな。ただでさえ休み合わねぇのに

 


「勉強だって頑張んないといけないだろうし。バイクで連れ回すとか、しょっちゅう遊びに行くとか…親御さんだって心配するんじゃねーの?」

 


確かに、無理して時間作ってるトコはあるかもな。あいつ、バイトもしてるし


井ノ原さん、いつもフザケてばっかだと思ってたけど…いろいろ考えてんだ

 


「俺ら大人なんだから、引くとこは引いてあげないと。引き際ってあるだろ



引くって…


別れろってことか?

なんでいきなりそんな事



でも…いくら井ノ原さんのアドバイスでも、別れるなんて俺は無理だし、健だってそんな気無いはず

 


「楽しいのは分かるけど、遊びに夢中になって、甘い蜜ばっか吸ってるとさ、後が辛くなるだろ」

 


『甘い蜜』とか『吸う』とか…何エロいこと言ってんすか


それに、遊びじゃないし、俺ら真剣だし。別れるとかあり得ないから

 


「可愛い健ちゃんの未来をさぁ、俺らが邪魔する訳にいかないじゃん」



あの…さっきから、ちょいちょい『俺ら』って言ってるけど、俺と健の問題っすよね

なに、さり気なく仲間に入ろうとしてんすか

 


「兄貴分なんだから、一歩引いてさ。俺らは健ちゃんを見守ってやろうよ」

 


兄貴分て…

俺、いつの間にアイツの兄になったんすか。っつーか『俺ら』?

 


「というわけで、健ちゃんじゃなく、たまには俺とどっか遊び行こうぜ。今週暇なんだよ」



…行かねぇよ


 

ったく…何言ってんだ、この細目

 



人の恋路を邪魔する奴はなぁ

馬に蹴られるか

 

でなきゃ

嫁の尻にでも敷かれとけ