PとMK(桜の木の下で)前編 | GIN@V6〜since20xx〜

GIN@V6〜since20xx〜

You've got the best choice!!


花見の時期ってのは、夜になるとまだ肌寒いけど、昼の花見はぽかぽかしてて


さぞかし、気持ちいいんだろうな




今日は近くの公園に来ている


只今、家族連れや酔っぱらいの学生・おっさん達の間を歩いて巡回中


みんな昼間から浮かれて楽しそうで

天気もいいし、お花見日和だ



俺は仕事だけど…まあ、毎年の事だし


今年は楽しそうにはしゃいでる人を見ても、そんなに苦にならない



えーっと、確かこの辺り……


おっ、いたいた



健がボランティアで募金活動するって言ってたから、巡回のついでに広場の方まで来てみた




生徒が5、6人、募金箱持って並んでる。健の横には保護者みたいに昌ジイも立ってた



学校は休みなのに、ご苦労さん

先生ってのも大変だよな


とりあえず、挨拶だけしとくか



近づいていったら、昌ジイの方が先に声を掛けてくれた


「お、剛。仕事か?」


先生…当たり前だろ。お巡りがプライベートでこんなコスプレするかよ



「お疲れーっす。休みなのに、先生も大変っすね」



言ってからチラッと健の方を見る



いつにも増してニコニコしやがって


だいぶ散っちゃったけど、桜の下で見る健も可愛いぞ。うん




「変なのいっぱい居るんだから、気をつけろよ。昌ジ…じゃなくて、坂本先生のそば離れんな」



昌ジイに聞こえないように、健の耳元で注意する



募金してくれた人にお辞儀しながら

「うん、わかった」なんて軽〜く返してきたけど…ホントに分かってんのかよ?




『森田、手空いてる?ちょっと駐車場まで頼む』


無線で井ノ原さんからの連絡が入る



チッ…手は空いてっけど、健の警護で忙しいっつんだ


心ん中でディスりつつ

「じゃあ、俺はこれで」

昌ジイに軽く敬礼して駐車場へ向かう




頼むぞ昌ジイ

酔っぱらいとか、変なの来ないようにちゃんと見張っとけよ。なんなら、俺と交代しねぇ?





「このおじさん、人んちの車の前で寝ちゃったらしくてさ」


駐車場に着いて、真っ赤な顔して正体不明になって眠りこけてるハゲを、井ノ原さんと一緒に芝生まで移動した



「大丈夫ですかー」


声掛けてたら、部下らしき人が来て


「あ、部長!こんな所にいた。おーい!」


同僚を呼んでハゲを連れ帰った



やれやれ。一件落着、と

さて、もう一周して健の顔でも見てくるかな



「俺、もうひと周りしてきます」


井ノ原さんに声を掛けて、広場へ向かった





ボランティアの方はぼちぼち終わりなのか、生徒達が片付けを始めてた



あれ?健…居ねぇ

嫌な予感すんな…



辺りを見回すと、案の定酔っぱらいみたいなのに絡まれて、肩掴まれてるやつがいた


ったく…昌ジイから離れんなっつっただろーが




「もうお仕事終わったんでしょ?」


「終わりましたけど、学校に戻るんで」


「じゃあ、先生に話ししてあげるからさ、一緒に飲もうよ」



あ?
おっさん何言ってんだ。未成年だぞ
つか、俺んだぞ




「はい、ちょっとスミマセン」


健と酔っぱらいの間に割って入る

俺の背中に健がぴったり張り付いた



「どうかしました?揉めてるみたいですけど」



「いやぁ、この子がね、ニコニコして俺達の事見てるし、あんまり目が合っちゃうから、仲間に入りたいのかなーって。ね?」



は?気のせいだ、バーカ
コイツの愛想がいいのは生まれつきなの



「健、お前この人達と一緒に行きたいの?」


頭だけ振り向いたら、黙って俯いたまま首を横に振って、俺の腕掴んでる手にギュッと力が入る



「だそうですけど?」


軽〜く睨み付ける



あんまりしつこいと、未成年者略取の現行犯でしょっぴくぞ、コラ



「あ〜…そうか…残念だなー」


おっさんがちょっとずつ後ずさりしてく



さてと…


おっさんを睨んだ顔のまま振り向いた



「健!先生のそば離れんなっつったろ?何やってんだよ」



ビクッとして俯いてる健に向かって、俺は追い討ちをかけるように怒鳴りつけた



「お前、無防備過ぎんだよ。変なのいっぱいいんだから、黙って先生にくっついてろよ。得意だろ?」


顔を上げた健が、予想してた泣きそうな顔じゃなくて怒った顔で



だいたい、愛想振りまき過ぎなんだよ。誰にでもニコニコしやがって」


自分でも、しまったとは思ったけど

…止めらんなかった



ヤベ…言い過ぎた



謝んないとって思ったのに


『森田ぁ、引き揚げるぞー。撤収』

無線から井ノ原さんの声が聞こえて


「三宅、帰るぞー」

向こうから昌ジイの声が聞こえて…



「早くみんなのとこ行けよ」


それだけ言って、多分泣いてるであろう健に背を向けて、俺は駐車場に向かった