年末年始、パリに行って、レストランの支払いのバカ高さに驚いた。
帰国して改めて思うが、日本は良くも悪くも物価が停滞したままで、何十年かが過ぎたのだな。
食べる側からすればありがたいことだが、しかし料理人を志す若者には、夢の無い国と映ったことだろう。
良い料理を作る努力が報われる国でなければ、やがて食文化は退潮へと向かってしまう。
さて、ミシュランや食べログ的にはどうか知らんが、私的には東京でも屈指のフレンチだと位置付けている「ラ・クレリエール」。
パリ後でも、いや、パリ後だからこそ、その価値が良く分かった。
ただ、お値段もパリ並みだったが・・・。
「コース以外に、こんなのも・・・」と誘惑してくる。それについ、乗ってしまった(笑)
メインのおススメ。燕三条の青首鴨かリムーザンの子羊かで、後者を選択。
アミューズ。イワシ、ジビエのパテ、ブーダン、といったラインナップ。いずれもすこぶる美味い。
トリュフのかき卵。「コートドール」の看板料理だが、ここのは玉ねぎやベーコンが下にあるので、ピュアな感じではない。
前菜はまず、島根の100キロクラスのイノシシの頭を半割りにして煮込み、肉を寄せると自らのゼラチンで固まる、テット・ド・マルカッサン。菜の花の苦みを活かしたソースに、クミンで香りづけ。上には菜の花、トリュフや雪室人参。猪肉の旨みがつまっているのだが、食事の始めで重く感じず、冬と春の風味を口中に残して、さらりと溶けていく感じ。
手羽先の出汁で炊いた京都の海老芋を揚げ、ウニ風味のソース・ショロン、さらにペルノーの利いたエスカルゴソース、そしてポロ葱に煮込みを合わせたもの。ソースのかかっていない海老芋から順に食べると、味のグラデーションが楽しめる趣向。これは悶絶級にうまい。
野鴨のラビオリ、雲子のポアレ 、 鹿児島たけのこのコンソメがけ、の写真は撮り忘れ。
で、これは帆立の貝柱、肝、ひもにかつお菜を合わせ、オランデーズソースで和えたもの。上には貝出汁を含ませたライスペーパー。全体はシャンパンソースという構成。ホタテの持ち味をフルに活かし、ひものような旨みの強い部位もソースで調和を取っている。
追加で頼んだ、トリュフのギャレット。15枚の美しい黒トリュフの下は、パート・フィローと甘い玉ねぎ。
ロブションの孫弟子のシェフが、師の魂を今に伝える一皿。これは高いよな。
トラフグの料理。柳身にシャントレルやピエブルといったキノコを合わせ、白子をしのばせる。ヴァンジョンヌをたっぷり使ったソースで。カマは唐揚げ。身がとてもジューシーで、噛むとジュワッとくる。和芹が食感と香りを引き締める。昔、アンコウとキノコの料理を、先代のトロワグロ時代のロアンヌで食べたが、あの時の感動を思い起こした。
リムーザン産の仔羊の塩パン包み焼き。イタリア野菜のアレッタや庄内あさつきを添えて。トリュフのソースは、濃密かつしとやかで艶めかしい味わい。なによりロゼ色の肉が、実にしっとりして滑らかなテクスチャー。低温調理では表現できない身質である。
ブリ―チーズとトリュフ。
ショコラスフレ。
小菓子のカヌレまで良くできている。
最高の夜ではあったが、お会計も目ん玉が飛び出た。
しかし、後悔はない。そこがパリと違う。