モノは試し、だの、百聞は一見にしかず、だのとはいうけれど、試さんでも見んでもいいものは、世の中にたくさんある。
それを教えてくれたのが、リッツカールトン東京の45階にある寿司屋「ひのきざか」だ。
銀座の地下や西麻布の雑居ビルの2階とかではなく、都会の夜景を眺めながら寿司でもつまもうか――、そんなアホな気を起こしたばっかりに、お会計で手痛い仕打ちを受けることに。
こういう店は、支払の時に金額を確かめないような人しか行ってはいけないのではないだろうか。
前菜は砂土原茄子の揚げ浸し。何をどうもったいつけたところで、茄子である。
つまみ三種盛り。クエ、しまあじ、マグロ赤身。まあ、普通にうまい。
太刀魚の塩焼きに大徳寺納豆をのせたもの。気の利いた割烹料理の域を出るものではない。
嫌う理由のない小丼。
冷製茶わん蒸し。
鱚の握り。
サザエのつぼ焼き。急に江の島感がみなぎる。
のどぐろ。
とろ。
車エビ。
穴子。仕事のレベルは並み程度。
このネギトロで、「さあ、しっかり払ってね」という意図が伝わってくる。
ビール1杯、一番安いシャンパーニュを1本あけて、2人で大台の一歩手前。
ロオジェにでも行けば良かった、と後悔の嵐。東京の夜景がやけに目に染みる一夜であった。