神奈川・葉山の真名瀬漁港、といっても十中八九は知らないだろうし、これを「しんなせ」と読める人は地元民か太公望に限られよう。
逗子の駅から、バスで20分以上はかかるだろうか。
よって、マイカー以外でのアクセスはとても不便である。
だから、こんなところで酒がからむ飲食店をやるのは、相当な腕があってのことだろう。
この「レッセンツァ」という店、東京で多店舗展開している企業の出店からシェフの経営が移り、店は格段に良くなった。
港越しに富士山が望める、という点では素晴らしいロケーションだ。
初訪問をしてみての率直な感想は、葉山という地には珍しく、本格的で満足度が高い店、といったところだ。

まず冷前菜は、ヒラメのカルパッチョ。
野菜で覆われてしまって見えないヒラメがイマイチ。薄く引いてあるのだが、身がすでに緩く、風味が落ちている。むしろクレソンやらの野菜の方がおいしい。

あさりと菜の花の温前菜。
食材の良さを活かすシンプルな調理。近隣で採れた野菜を上手に取り入れている印象。

パスタその1は、ペスカトーレ・ビアンコ。
魚介の出汁を上手に活かしていて、パスタとちゃんとなじんでいる。
腕前はしっかりしていることが伝わる一皿。

こちらは鹿肉を使ったボロネーゼ。
これも良く出来ている。というよりかなり高いレベルの味わい。野菜を入れ過ぎてボケた味のボロネーゼが多いが、これは肉のうまみがぎっしり詰まっている。

メインは、仔羊のローストを注文。
見ての通り、シンプルである。
余計なことをしないのが、イタリアンらしい。
肉の火通しなどは文句なしなので、見た目にとらわれず、本質を味わう向きには良かろう。
ちょいちょい通いたくなる佳店である。
「ピスカリア」は暗い接客と量の少なさ、割高感が気に喰わない。
「イル・リフージョ」は、何度通っても心は通わない。
気楽に立ち寄れる店として、末永く頑張ってほしいと願う。