八甲田ホテル MeDeau(メドー)  | 御食事手帖

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主に東京と湘南で食べ歩き、でも美食のためならどこへでも旅するブログ

クラシック、というよりはノスタルジックな料理を出すホテルダイニング。しかし、食材はなかなか悪くなく、食べて腹は立ちません。スキーリゾート貧国の日本にあって、このレベルなら許さざるをえないかと思います。
★★★☆☆


のっけから、自分の国の悪口を書いてすみません。
でも事実です。
日本は、スキーリゾート貧国。間違いありません。

欧州でスキーを楽しんだ方なら、ご賛同いただけるでしょう。
アクセス、宿、レストラン・・・、何をとっても、日本とは段違いです。

例えばフランスのクーシュベル。
申し分ない高級ホテルがずらりと並び、夜の食事はミシュラン2つ星が2軒。
ここでいうミシュランとは、日本のなんちゃってガイドとは違いますので、念のため。
熟成の程よい古酒をごっそりため込み、素晴らしい料理と共に楽しめる名店が、スキー場のすぐ脇にあるのです。そのうちの1軒、「ル・シャビシュー」で飲んだミッション・オーブリオンの1982年は、今も忘れられません。
極上のパウダースノーが降り積もるゲレンデへ出かけるのに、ジャケットや革靴も用意していくリゾート。アフターの楽しさを一度味わえば、日本がいかに貧しいか、痛感せざるをえません。

今回うかがった八甲田ホテルは、厳密にいえばスキー宿ではありません。
が、スキー客が多い土地柄にあっては、まあ、そんなに腹が立たないレベルです。
何より、客を喜ばせようとするサービス精神が旺盛で、滞在中、嫌な思いをすることがありません。
京都でひどい目にあった直後だけに、青森の人たちの優しさが心にしみました。


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さて、ホテルのダイニング。
窓の外は、ライトアップされた雪景色。
東京の人間にとっては、飽きることのない風景です。

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アミューズは、水だこのマリネ。
おいしいかどうかでいえば、特においしくありません。
でも地元の食材を楽しんでもらおうという志や、よし。

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前菜は、イタリア産生ハムと野菜のサラダ風。
野菜のサラダ風というネーミングの良し悪しは、とやかく言わないでください。
雰囲気というか、ノリですから。

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こちらは、ボタン海老のラビオリ、スープ仕立て。
陸奥湾の冬の味覚です。あっさりめながら、ビスクも海老の風味がします。
ぷりぷりとしたラビオリと、キスラーの相性はぴったり。
ナッティーかつブリオッシュ系の香りに、黄桃やアプリコット、洋ナシの味わい。
焦点の定まった、締りのある酸も魅力です。何杯でも飲みたくなるワイン。

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近海産海の幸の盛り合わせ、カプチーノ風、キャベツソース。
ネーミングについて、突っ込むのはやめましょう。
冬の陸奥湾といえば、ホタテ。加えて、寒びらめ。タラバガニも入ってます。
ミネラルたっぷりの香りと柑橘の味わいがふくよかなドン・リュイナールが良く合います。
もちろん、東京では通用しないでしょう。
でも、おおかたのスキー場のホテルよりははるかにマシです。
腐ったバイキング料理を思い起こしてください。

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メインは青森県産黒毛和牛フィレ肉のポワレ。
付け合せは、雪中人参など。ソースはマデラ風味です。
大変頑張っています。肉質は全く悪くありません。焼き方も。
華はありません。でも、ピション・ラランド1990年とは、ちゃんと釣り合いました。
ワインの方は、見事な熟成。カベルネの青っぽいニュアンスの奥に、スーボワ、なめし皮の香り。酸、果実味、タンニンの各要素が、互いを立て合うバランス感。
素直においしい。90のボルドーの良さが、存分に発揮されています。
こういうワインとは、シンプルなフィレ肉の方が良いのでしょう。
こういうのを物差しにすると、カリフォルニアのカベルネがより多面的に楽しめます。
まだ5年くらいは発展が見込めるワイン。もう1本、ストックがある幸せを噛みしめるばかりです。

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ログハウスのようなダイニングでの食事。
ここで食べる朝食のもようは、また次回。