




広尾からでも恵比寿からでも歩くことになる不便な立地。
カフェっぽいモダンな造りの店内にチェット・ベーカーなどのジャズが鳴る、イマドキ・チャイニーズが陥りがちなコテコテ感が漂います。
コースは3500円から7500円まで、と街場の中華レベルの料金設定。
アラカルトの種類も豊富ですが、料理の質から考えると、どれも大変良心的な価格です。
7500円のコースはまず前菜5品盛りから。

クラゲの醤油漬けは食感も味も抜群。
「押し豆腐とコリアンダーのあっさり胡麻油和え」は好きな料理ですが、全体的にもパクチーについても量が少なくパンチがありません。
チャーシューは完成度が高いですが、これもやや力強さに欠ける印象。

前菜の中でとにかく出色だったのは、この「四川名物"よだれ鶏"蒸し鶏の特製香ラー油」。
鶏の質が良く、蒸し加減も上々。そしてラー油の辛味と酸味のバランスが申し分ありません。
ピーナッツも胡麻も効いてます。これだけでも、また食べに行きたい、と思わせる一品。

こちらは「気仙沼吉切鮫尾ヒレの姿煮 伝統的醤油煮込みで 60g」。
7500円のコースですから、上質のヒレを望むのは酷な話。
というより、無理してコースに入れ込むことがないようにも思います。
ただ、煮汁は大変結構な味でした。

続いて「大山鶏の香港風クリスピーチキン 菜花の衣揚げ添え」。
この鶏も実にうまい。皮をカリッカリのパリパリに焼き上げても、なお残るしっとり感は見事です。
豆鼓も良いアクセントになってます。

こちらは「アオリイカとマコモ茸の青紫蘇炒め」。
青海苔を使うパターンもありますが、シソの方がさっぱりと食べられます。
ただ、鶏ほどの質の良さは感じません。

メインは肉か魚かの二択。かさごの清蒸にしましたところ、2人分でどーんと丸々300グラムのが出てきました。
中がかすかに生でとどまるくらいの、絶妙な火通し。
醤油だれもやさしい味わいで、万人好みでしょう。

締めは、「干し蛸と鮑の香港リゾットチャーハン」。
リゾッチャというのは、初めて食べましたが、個人的にはパラパラのチャーハンの方が食べたいですね。せっかく火力の強いお店なら、なおのことです。
干し蛸は食感も風味もよく、出汁にもなっている感じ。ただアワビの存在は認識できませんでした。
とはいえ、味の濃密な飯物なので、これをツマミにまだ酒が飲めそう。
これにデザートと特選工芸花茶がついてます。
あえて苦言をていすとすれば、付きだしのピーナツの後、次の料理までの待ちが長かったのが苦痛。
混雑時に入店したらどうなるのか、不安を感じました。
フロアのサービスも、もうちょっとこなれてくると良いのですが。
とは言いつつも、よだれ鶏を目当てに、またうかがうと思います。