隣り | 「ゆるりと仏教」いも掘り坊主の与太話

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「念死念仏 常途用心」
仏さまの御教えを、拙僧のエッセイとともに紹介しています。
ほとんど与太話(^_^;)ですが、法話らしきものも書いています。
つたない文章ですが、笑ってもらえたり、うなずいてもらえたりしたら嬉しいです。
毎週水曜日に更新しています。

地下鉄に乗っていた。

 

日中だったので、座席には空席が多かった。

 

3駅先に行くだけだった。

 

だから、車両の端に立っていた。

 

車椅子の方が乗車するエリアである。

 

次の駅では数人が乗ってきた。

 

ほとんどの人が座った。

 

一人、若い女性だけは立っていた。

 

しかも、私のすぐ隣で、である。

 

(なんで?)

 

車両内には、その女性と私しか立っていない。

 

他にいくらでもスペースはある。

 

(別の所に移動したい)

 

そう思うが、あからさまに移るのも失礼になるような気がする。

 

そこで、取り敢えず数歩前に出ることにした。

 

壁際から車両の中央に進んだのだ。

 

そして、次の駅で別の車両に移った。

 

(どうしてもあの場所がよかったのだろうか……)

 

別の日、郊外にある大型スーパーへ行った。

 

午前中だからか、お客はまばらだった。。

 

車を駐車場にとめて買い物に行く。

 

さて、15分後、車に戻ると、隣に車がとめられていた。

 

(なんで?)

 

数百台はとめられる駐車場である。

 

他がいくらでも空いている。

 

その場所は出入り口に近いわけでもない。

 

慎重にドアをあけて運転席に乗り込んだ。

 

(いつもあの場所にとめている人だったのだろうか……)

 

さらに別の日、都内のあるお寺へ行った。

 

舞楽を鑑賞するためである。

 

演奏は屋外で披露されることになっていた。

 

出来れば目の前で拝見したい。

 

だが、そうすると密集地で観ることとなる。

 

押し合いへし合いになるのは勘弁である。

 

そこで、舞台より約30メートル下がった場所に予め陣取った。

 

(ここにしよう)

 

周囲よりも四、五段高くなっている。

 

離れてはいるが、よく見通せる。

 

ところが、まもなく、20人程のご老人達がやってきた。

 

「雅楽をするみたいよ」

 

そう言うと、皆、私の隣に腰を据えた。

 

舞台周辺ですら、まだ人は集まっていない。

 

(それなのになんで?)

 

仕方なく舞台を挟んで対面に向かった。

 

(あの場所は音響がよいところだったのだろうか……)

 

 

お釈迦さまの御教えに、以下のお言葉があります。

 

『好ましいものも、好ましくないものも、ともに捨てて、何ものにも執著せず、こだわらず、諸々の束縛から離脱しているならば、かれは正しく世の中を遍歴するであろう』

 

【岩波文庫 ブッダのことば 中村元先生訳P76】

 

ありがとうございました。