釣り | 「ゆるりと仏教」いも掘り坊主の与太話

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「念死念仏 常途用心」
仏さまの御教えを、拙僧のエッセイとともに紹介しています。
ほとんど与太話(^_^;)ですが、法話らしきものも書いています。
つたない文章ですが、笑ってもらえたり、うなずいてもらえたりしたら嬉しいです。
毎週水曜日に更新しています。

夕方、勤めている寺の門を閉めて若洲海浜公園に向かった。

 

釣りをするためである。

 

少し前に、釣り好きの友人と話をした。

 

「この前、タイみたいな魚を釣り上げている人がいたよ」

 

私はよく東京湾沿いの公園に行く。

 

だから、そこでみかけた光景をなんとなく伝えた。

 

「だったら竿をあげるからお前も挑戦してみなよ」

 

すると、友人が勧めてきたのだ。

 

「この辺でいいか」

 

若洲海浜公園には防波堤がある。

 

長さは五百メートル位ある。

 

そこには釣り人が多くいる。

 

そこで、右にならって、ズンズンと防波堤を進み適当に場所を決めた。

 

私は、釣りに関して全くの素人である。

 

だから、本当にテキトウに場所を定めた。

 

もらった竿をのばす。

 

疑似餌を糸に結ぶ。

 

やはり仕掛けもテキトウである。

 

事前に友人にレクチャーを受けた。

 

だが、はっきり言って難しかったのだ。

 

一人、海面に糸をたらす。

 

防波堤の幅は五メートルくらいである。

 

大きな船も行き交うので底は深いに違いない。

 

しかも、今いるのは防波堤の先端である。

 

あたり一面海水だ。

 

海にすいこまれそうである。

 

「落ちたらどうしよう」

 

余計なことが頭をめぐり怖なった。

 

それでも一時間半程頑張った。

 

夕日は完全に沈んでいた。

 

さて、道具を片づけて、陸側へもどろうとすると海面が騒がしくなった。

 

「えぇぇ!」

 

おどろいた。

 

のぞいてみると、小さな魚の群れだった。

 

バシャバシャと音が聞えるほど密集している。

 

防波堤の端から端までいっぱいいる。

 

まるで、巻き網漁で捕まえたような場景だ。

 

壮観だった。

 

後でしらべてみるとカタクチイワシの群れだとわかった。

 

普段は磯場を歩いたり、丘の道をランニングしたりしている。

 

だから、十年近く公園に来ているが、防波堤の先端まで来たことはなかった。

 

五十歳にも近くなると、世の中のことを知ったような風にもなってくる。

 

しかし、細かく観ればまだまだ知らないこと、不思議なことはいっぱいありそうだ。

 

とても楽しい釣りだった。

 

ところで、釣果は……。

 

もちろんボウズである。

 

 

方丈記に以下の文があります。

 

『わが人生で一番の楽しみは、のんびりと肘枕でうたた寝して、自由の境地を味わうこと以外にない。また、生涯で最後の望みは、四季折々の美しい景色を味わって、大自然に遊ぶことである』

 

【角川文庫 ビギナーズクラシック・方丈記 武田友宏先生編P140】

 

ありがとうございました。