お使いの帰り道、東京港野鳥公園に寄った。
大きな声では言えませんが、寄り道です。
平日だったからだろうか園内は空いていた。
公園は広い。
約三十六ヘクタールなのだそうだ。
単純計算で六百メートル四方となる。
ここに干潟、淡水池、森、林、農地などがある。
遊歩道は、所々うっそうとしている。
とても羽田空港の隣だとは思えない雰囲気だ。
まるで地方の自然豊かな地のようである。
すれ違う人たちは、ほとんどが大きなレンズのついたカメラを持っていた。
長さは三十センチくらいありそうだ。
観察広場でも、カメラを構えている人がちらほらいた。
もちろん左手は巨大なレンズを支えている。
こちらは、完全に丸腰だ。
百五十メートルくらい離れた木に、茶色い大きな鳥がとまっているのをみつけた。
「トビ」だろうか、「タカ」だろうか。
判別がつけられないのが悔しい。
「あのレンズでみられたら……」
うらやましかった。
茶色い鳥の手前五十メートルくらいには、青い大きな鳥がいる。
これは色で区別ができた。
アオサギだ。
先へ歩いて行くと、立派な建物があった。
中は、観察室、展示室、視聴覚室、図書コーナーなどとなっている。
観察室の大きな窓ガラスからは、干潟が一望できる。
さっそく「カワウ」と白いサギ「ダイサギ」をみつけた。
あまりに沢山いたので「おー」と思わず声が出てしまう。
窓ガラスには、公園内にいる鳥たちの写真が飾ってあった。
たまたま目の前にした写真には、「エナガ」と書かれていた。
「かわいいな」
愛くるし姿に、またもや声が出てしまう。
すると、カチャカチャとボタンを押しているお姉さんが近くに来てくれた。
おそらく「日本野鳥の会」の方だ。
そういえば、小学生の頃、同じような道具を使って道路で何かを数えている人がいた。
「日本野鳥の会の人だぜ。いつも鳥を数えているから数えるのが上手いんだよ」
嘘か本当かわからなかったが、そんなことを友人が教えてくれた。
三十五年近く経って真否が判明した。
なんだか嬉しい。
「かわいいですよね。小さくて素早いんですよ」
「エナガ」のことを教えてくれた。
「公園内のどこかに必ずいます。鳴き声をきいているとみつけられるかもしれませんよ」
お姉さんは「シュシュ、シュルル」と鳴き真似までしれくれた。
優しそうな方だった。
続いて建物の下の階へ行ってみる。
干潟の上を歩けるようになっていた。
案内板によると、「ハゼ」がいることもあるそうだ。
ならばと、慎重に辺りをみまわす。
小さなカニはいた。
が、「ハゼ」はみつけられなかった。
「おっといけない」
だいぶ遊んでしまった。
いい加減に帰らねばならない。
建物を後にして出口に向かう。
木々で覆われた薄暗い道を進む。
「なんだ」
しばらくすると、頭上で細かく動いている小さな鳥をみつけた。
「キツツキだ」
家で調べたら「コゲラ」だとわかったのだが、どちらにしても初めて本物を観たのだ。
感激である。
更に、横にはとても小さくて尾の長い鳥がいる。
「いた、エナガ」
みつけてしまった。
またまた感激である。
脅かしては悪いので、胸のなかで大声を出した。
ここまで小さいとは思わなかった。
後で確認してみると、日本で二番目に小さい鳥なのだそうだ。
体重は八グラムと記されていた。
楽しく自然観察をしていると時間はアッという間に過ぎてしまう。
しかも、苦も無くかなりの距離を歩けてしまう。
管理制御されている街も悪くはない。
でも、自然の中にいる方が心身は落ち着く。
そう感じているのは私だけではないであろう。
「観無量誦経」に以下の御教えがあります。
『如意宝珠から金色に輝くえも言われぬほど美しい光明がほとばしり、その光が百種もの宝玉の色に輝く鳥たちとなって、心に染みわたる美しい鳴き声で絶えず念仏・念法・念僧の教えを称讃している。これが八功徳水の想という修行であり、第五観というのである』
【現代語訳 浄土三部経 浄土宗総合研究所編P196】
ありがとうございました。