馬の神様。
聞こえますか?
最後は笑って見送りましたが
まるで体の半分がえぐり取られてしまったようです
痛いです
とても痛いのです
そちらに行った私の馬のことでご相談があります。
そうです、二日前の夕方に空に駆け上がっていった真っ白なあの馬です。
情けない話ですが、こんなに泣いても涙があとからあとからあふれてくるのです。
涙はどこからでるのでしょうか。
ご覧になったでしょうか。
壮絶な最後でした。
戦い抜いた28時間でした。
私は最も優しい方法で彼の命を奪う決断をしましたが、あなたもご覧になったでしょう。
あの夜に限って空からは雪が落ち、否応なく足止めを食らった私たちは皆で泣きながら夜を明かすしかなかったのです。
今となっては彼がその方法を拒否したとしか思えないのです。
どなたか教えてくれませんか。
涙はどこからあふれてくるのでしょう。
だけど神様
あなたはやっぱりお優しい方でした。
最後は安らかに逝かせてくれて、そして最後まで後悔なく全てを行わせてくれました。
すべてをやりつくした時に、初めて『最期』が許されるのだということを私は初めて知りました。
だから今度は私が痛みに堪える番なのでしょう。
堪えましょう。
彼との『最期』に比べたら、どうってことありません。
ですから無事に神様の元へたどり着いたなら、どうか私に教えてください。
そして願わくば、彼に最高の称号を与えてやって欲しいのです。
弱虫ですぐに泣いていた私を、こんなに強くしてくれました。
なにもかも中途半端で根気がなかった私を、こんなに粘り強くしてくれました。
ひとりで立ち上がることができなかった私を、たくさん転ばせて傷だらけにして、だけどその傷の痛みも
意味も、それを叩きこんでくれたのは彼でした。
彼は、私をちゃんとした人間にしてくれたのです。
馬の神様へ。
祈りと希望を込めて。