トナカイの心配など露知らず、少女サンタは張り切って二階の窓を開けた。
「お邪魔しまー」
「やっと来たな! 待ちくたびれたぞ」
部屋の中に入った途端、明かりがついた。
少女サンタは眩しさに目をしばたかせながらも、声の主を探す。
果たして、ベッドの上に腕組みして仁王立ちになっている少年がいた。
その彼が、余裕たっぷりに口を開く。
「お前は何者だ?」
「見ての通り、私はサンタクロースよ」
少女の答えに、少年はベッドの上を飛び上がらんばかりのガッツポーズをした。
「よっしゃあ! ホワイトコーヒーを飲んで粘ってた甲斐があったぜ」
「何よ、ホワイトコーヒーって」
ブラックコーヒーならまだしも、ホワイトコーヒーなど聞いた事がない。
首を傾げる少女サンタに、少年はよくぞ聞いてくれたとばかりに答える。
「フフフ、ミルクと砂糖をたっぷり入れた、俺専用特製コーヒーだ」
がくっ。
得意げな彼の言葉に、少女サンタの膝の力が抜けた。
「ってか、子どもがこんな夜中まで起きてちゃダメじゃない」
「仕方ないだろ。フウカの奴に『サンタクロースなんていない』ってことをカガク的にショーメイするためなんだから」
言って、少年はまじまじと彼女の姿を見た。
「しかし、本当にいるとはな……」
「だからってこんな時間まで起きてたら体に悪いわ。成長ホルモン、だったっけ? 夜早く寝ないと、それが正常に分泌されないらしいよ」
いつだったか、トナカイが言っていた言葉を思い出して、少女サンタは彼に注意する。
途端に、少年の顔色が変わった。
「ま、マジか?」
「マジよ(たしか)。」
この少年、科学的なアプローチには弱いらしい。
と、ここで少女サンタの頭の中にひとつのアイデアが浮かんだ。
「眠りたいけど眠れない。そんな君には、これをプレゼントしよーう!!」
ドラムロールとともに、彼女が袋の中から取り出したのは……
「安眠枕ーーーーー!?(汗)」
「イエス☆ それじゃあ、いい夢をっ」
リアクションに困っている少年にそれを押し付けると、少女サンタは風のように去っていった。
「あ、コラ、待っ……Zzzz」
慌てて追いかけようとする少年だったが、にわかに夢の国へと旅立っていってしまった。
それはコーヒーが切れたせいか。それとも、クリスマスの奇跡か……
いずれにしろ、枕を抱いて寝る少年――ヒカルの顔は安らかだった。
***
最近、よく居眠りしてしまいます。
寝すぎも体に悪いのに……(汗)。
関係ないけど、タイトルは「サンタクローストーリー」と読みます。