2020年―『神戸学』をはじめよう
―神戸市の発展は市民の英知と行動にかかっている―
2020年は神戸市元年というべき年になりました
神戸市の労働組合役員の「ヤミ専従問題」を皮切りに始まった労働組合幹部の特権的待遇に対する是正は、外郭団体にも及びました。新聞によれば、神戸市の外郭団体「神戸新交通」が労働組合役員を務める社員に不適正な貸しつけや給与支給をしていた問題で大量処分が行われ、中でも、元労組委員長については懲戒解雇され、長年にわたる行政当局と市労働組合幹部の癒着による腐敗の膿は出し尽くされつつあるようです。
また、垂水区での「女子中学3年生のいじめ自殺問題」では教育委員会の指導主事が同級生からの「聞取りメモ」を破棄させ、調査を困難にした問題、「教員同僚いじめ事件」におけるハラスメントの概念をこえる「おぞましい」犯罪行為に対する調査と処分などが行われました。
この間、久元喜造神戸市長はそれぞれの問題に対して明確なコメントを発し、個別に第三者委員会を発足させ、問題点を洗い出し解決の方向性を示してきました。勿論、私たちはそのすべての結論に納得しているわけではありませんが、これまでのように労働組合との「ボス交」で課題を解決するという前近代的手法でなく、問題点を市民公開し、神戸市長主導による解決をはかるという市政に転換してきているようです。
市政のあるべき方向が見えた「都市空間向上計画(素案)」での議論
その典型が、神戸市の「都市空間向上計画(素案)」(以下、「空間計画(素案)」)に関する提案と市民意見への対応にみられます。少子高齢化と重工業を中心とする産業の衰退は神戸市の人口を減少させ、都市構造を劇的に変化させてきました。そうした現状認識の上に立ち「空間計画(素案)」提案は賛否は別として極めて時宜を得たものでした。
久元神戸市長は「空間計画(素案)」を市民に提起し、以来、4回にわたり、市民から意見を募集しました。これは地元の「ボス交」中心にしてきたこれまでの市政においては異例のことであり、これに対して、日本共産党市会議員団は反対意見を市民に提起し、計画の撤回を迫るたたかいを展開しました。市議会における議席数は少数とはいえその闘いぶりは、「竜虎相打つ」ごときインパクトを市民にあたえました。結果として、「空間計画(素案)」ほぼ原案通り決定されたとしても市民参加による市政のあるべき典型像を示したという点では大きな意義があったように思います。
『神戸学』からはじめよう幸福都市神戸の実現を
この間の神戸市職員による一連の不祥事にみられる官僚の劣化、その劣化を生み出した旧態依然の「ボス交」による市政が完全に行き詰っていることは明白ですが、市議会においては日本共産党を除く政党が久元市長を無批判に支持し、市民の側に立つべき市の労働組合は幹部たちの不祥事により解体状況に追い込まれています。
こうした状況の中で生まれるのは民主的な市政とは限りません。危険なのは権威主義です。権威主義とは強い者や権威に従う、単純な思考が目立ち、自分の意見や関心が社会でも常識だと誤解して捉える傾向が強く、外国人や少数民族を攻撃する傾向があり、このような社会的性格を持つ人々がファシズムを受け入れやすいと言われています。
今後、久元神戸市長が批判的な市職員を排除し、形式的な民主主義手続きは行うが市民の市政への参加を行わず、むしろ市政への無関心を奨励するようになり、それを批判し、是正する市労働組合や市民団体との懇談・交渉を拒否するようになれば独裁の一歩手前の権威主義に陥ることになります。
私たちは神戸市を権威主義に基づく官僚主義市政としないために意識的に意見・提言・対案を市民の力で出さなければなりません。そこで『神戸学』が必要なのです。居酒屋で、喫茶店で、夫婦で家族で神戸の未来を話し合えるように学習討論していくのです。そこで今回は神戸の都市、産業、文化、社会の基層を理解するうえで重要だと思われる書籍を選んで紹介させていただきました。
今、竹内まりや「いのちの歌」が、学校の卒業式でも歌われ多くの人に愛されています。♪「この星の片隅で めぐりあえた奇跡は どんな宝石よりも 大切な宝物」。たしかに「めぐりあえた奇跡」は、人だけでなく山や川、草や木、虫や鳥などの「命のつながり」のなかで起きるものですね。人は、「命のつながり」のなかで幸福を、すなわち、健康で、ゆたかな人と人との関係、人と自然との関係を築き、自分の人生を自己決定でき、個人として尊重されることを求めるものなのでしょう。
♪「いつかは誰でも この星にさよならをする時が来るけれど 命は継がれてゆく」。人の生は「はかない」ものかも知れませんが、「命のつながり」と「継がれてゆく命」によって、宇宙(銀河系)のなかで「永遠の命」として輝けるのでしよう。
この歌が、多くの人びとに受け入れられるのは何故でしょうか。それは「命のつながり」と「継がれてゆく命」に対する不安と危機感があるのではないでしょうか。日本は、地震や津波、豪雨、原発事故が潜在している災害列島です。ひとたび大災害に見舞われれば不幸のどん底に陥ってしまうのです。環境科学者のヨハン・ロックストロームは、私たちが現在の道をたどり続ければ、高い確率で気温上昇は2度を越える危険があり、不可逆的で破滅的な結果をもたらす危険性があると警告しています。ドイツの環境シンクタンクは、2018年の気候変動で一番被害を受けた国として日本をあげました。
しかし、神戸市にある神戸製鋼所は、温暖化の要因である石炭火力発電所(140万kW)を建設・稼働し、さらに、新たに(130万kW)の増設工事をしています。神戸市は「山を削り海を埋め立てる」大規模開発を推し進めてきました。森林破壊と海面埋め立てなどで、山や川を壊し、草や木、虫や鳥、魚などの生きる場を奪い、地球温暖化の要因をつくってきたのです。私たちは、このような近代の文明を反省し、「命と幸福」のために温暖化問題を克服すべく、草の根から「学び合い育ち合い助け合い信頼しあう」コミュニティをつくることが求められているのではないでしょうか。