第28話 職場における女性の共同参画と機会均等の実情を探る | 人事賃金制度のブログ

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 総務省の労働力調査を見ると、2012年における「管理的職業従事者」に占める女性の割合は11%と言われ、依然として低い水準にあるようです。

 また厚生労働省の賃金構造基本統計調査の2015年版における女性管理職の割合を職位別に見ると、課長職は8%台、部長職は5%台となっており、職位が上がると割合は低くなっていきます。

 それでも40年前に比べると課長職は7%上昇、部長職は4%上昇と、右肩上がりに上昇していることは事実で、女性管理職の割合は長期上昇傾向にあると言えます。

 また管理職の候補職位と言われる係長職は40年前に4%であったものが、2015年には15%台と、上昇率も占有率も大きくなっていて、このことからも長期的には課長職や部長職の管理職に締める割合は、順当に増加することが予想されます。

 これが役員となると、国内の全上場企業における女性の割合は1%強で、このうち社外取締役に限ってみると2%強とやや高くなっているものの、低いと言われる従業員の管理職位の11%台に比べても、その割合は極めて低いと言えます。

 社外取締役の女性比率が社内取締役よりも高いのは、社会的に名声のある女性を登用して、企業のイメージ向上に役立てようとする意図が見え隠れしていて、やや不純な動機が伺えるようです。


 日本の管理職に占める女性の割合が、どれほど低いかを主要国と比較すると、1位のアメリカは43%、2位のフランスは39%、3位のイギリスは34%、4位のドイツは30%と、欧州先進国が30%以上の高率で並んでいます。

 因みに韓国は10%で日本とほぼ同じ水準にあり、女性の管理職に割合は、東西間で地球規模の地域格差があるようです。

 役員の女性比率になると、1位のノルウェーは41%、2位のスウェーデンは27%、3位のフィンランドは20%と北欧が上位を占め、アメリカは15%、ドイツは13%、フランスは9%と、日本の1%は驚くべき低さと言えます。

 役員に占める女性比率に付いて、フォーチュン社が調査したところによると、女性比率が高い企業ほど売上高利益率や総資本利益率が大きいと言う結果が出ていて、このことは管理職に付いても言えるとされていることから、重要なポストに女性が就くと、かなり業績が改善されると結論付けています。


 女性の管理職や役員が極めて少ない理由に、日本の因習のような男尊女卑の性差別意識があると言われ、この原因に第2次世界大戦の終了まで続いた家父長制があるとされますが、地域によっては今日でもなお少なからず残っていると言われます。

 ただ男社会の身勝手さが女性の地位向上の妨げになっているとばかりとは言えず、労働政策研究所の調査によると、一般従業員の女性のうち、課長職以上への昇進希望のある者は10%程度で、男性の60%に比べると大きな落差が出ています。

 さらに現在課長職にある者が、部長職への昇進希望があるかという問いに対し、女性は35%で、男性は60%となっており、更なる昇進意欲に付いても、女性は男性に比べて半分程度となっています。

 一般従業員の女性が昇進をあまり望まない理由の調査で、一番大きいのは「仕事と家庭の両立が困難」で、次に「周りに同性の管理職がいない」、「自分の雇用身分では可能性が無い」などと続いています。

 つまりは社会環境が女性の管理職への進出を妨げていると言うことになりますが、「責任が重くなることを好まない」とか、「メリットが無い」などネガティブな意識があることも確かなようです。


 現状を変えようとするとき、社会環境の改善や意識変化を待っていては埒が明かないとばかりに、内閣府の男女共同参画推進連携会議が、各分野の管理的地位に占める女性の割合を、2020年までに30%にする目標を発表しました。

 例えば国会議員の現在の女性比率は衆議院が11%、参議院が18%、大臣が6%となっているのを30%に、都道府県の議員が8%、都道府県の知事が6%、国家公務員が2%、都道府県の職員が6%となっているのを30%とするよう目標を与えています。

 この他、大学講師以上、医師、弁護士、公認会計士なども、現在20%以下であるのを、30%にするよう指導するとされています。


 指導の内容はどのようなものになるかはこれから決まるようですが、「男女間の格差を改善するため必要な範囲で、機会を提供する」とされることから、一番分かりやすい方法として、女性枠を設けると言うことになるようです。

 この「必要な範囲で機会を提供する」ことをポジティブアクション(積極的改善措置)として、男女間格差が解消されるまで続くとなると、かなり強制的な指導が入ると考えられます。

 例えばノルウェーはポジティブアクションの目標を40%として、国営企業や民間上場企業の取締役会の男女構成が40%を達成しない場合は、解散を命じることが出来るようにしたと言うことです。

 この結果ノルウェーの企業における取締役会における女性比率は現在41%と言われ、ポジティブアクションの成功例と言われます。

 ポジティブアクションの指導がされたとしても、数合わせでは現場に混乱が生じることになりかねず、先ず日本社会に根強く残っているといわれる「男尊女卑」を払拭する意識改革が必要です。

 そして女性管理職を育成するためのキャリアアップ教育の内容整備、仕事をしながら出産や育児が可能なワークライフバランス(仕事と生活の調和)の実現などに取り組むことが必要です。


 次回は今後減少の一途を辿る日本の人口問題の中で、喫緊の課題として取り組まなければならない「高齢者雇用対策」に付いて探ってみることにします。


人事賃金コンサルタント 上田松雲