平成29年
10月26日晴れ 今日も快晴だ。部屋の鍵を返しに行くと、フロントの女性から訊ねられた。「お遍路する理由を聞くのはダメだと分かっているのですが、なぜ北海道からお遍路に来たのか聞いても良いですか?それも、歩きで。」と、気になるようだった。私は笑いながら「良いですよ。深刻な理由はないですから。学生時代から、歩いてみたいと思っていただけです。」とだけ答えたら、「へぇ、そうですか。人生とか仕事とか、いろいろ悩みを抱えてお遍路している多くの人と、雰囲気が違って見えたので。」と、言われた。毎日様々な理由で歩いているお遍路さんに接していると、私のような遍路が奇異に見えたのだろうか。先祖供養と、自分に関わったすべての人々に感謝して、お遍路している事には違いないけれど、本当に歩いてみたいと思っていただけだから仕方がない。私はお遍路を楽しんでいるので、きっと深刻な顔に見えないのだ。自分でも可笑しかった。御礼を言って、26番金剛頂寺に向かった。途中の公衆トイレで、真っ赤なオシッコが出てドキッとした。夕方には消えたけれど、昨夜の食事のせいだろうか。国道55号線を横道に入り、百数十メートル登り、民家のある狭い道路を行く。地元の人々が、すれ違い様に朝の挨拶をしてくれるのが、とても気分が良い。広い金剛頂寺の境内に、『がん封じの椿』という大きな木の瘤が、3本祀ってあった。家族ががんを患わないように、しっかり手を合わせた。お大師さんと天狗が、問答をしたという石版のレリーフもあった。どこに行っても、四国はお大師さんの伝説や逸話が多くて驚く。朝早いので、お遍路している人は誰もいなかったが、帰りの際に年配のグループのお遍路さんと挨拶を交わしただけだ。登って来た道と、反対側の道を降りて行けば近道だが、道標が見当たらない。天気も良いし、室戸岬の西にある行当岬をグルッと回って、不動岩のある海岸線を歩いた。1時間ほど遠回りだったが、晴れているので太平洋がとても穏やかに見え、気分爽快に歩いた。『道の駅キラメッセ室戸』という道の駅があり、立ち寄って冷たいジュースを飲んだ。捕鯨で有名なのか、『鯨館』と書かれた展示資料館が隣接していたが、寄らずに通過した。今日は、『ホテルなはり』に宿泊の予約している。暑い日差しを感じながら、半袖のTシャツで歩いていた。海岸線を歩いていたら、背後からタッタッタッと足音が聞こえてきた。ランニングしている女性の足音で、スピード感があった。『室戸阿南海岸国定公園』の看板の前でカメラを構えていたら、女性が「撮ってあげましょうか。」と言ってくれたので、看板をバックに写してもらった。自転車で逆打ちのお遍路さんが、すれ違い様に手を振ってくれた。理由は知るよしもないが、若い青年もお遍路をしているのだ。吉良川町に入ると、高知県で初めて国の、『重要伝統的建造物群保存地区』に選定された街並みがあった。漆喰などの古い時代の建物らしいが、どこも寄らずにサーッと通り過ぎた。吉良川大橋を渡り、奈半利町に近くなるにつれ、『ホテルなはり』の大きな看板を何回も見たが、なかなか着かないので、ため息ばかりついて歩き続けた。『ホテルなはり』は、黄色い壁の洋館風の大きな建物だった。歩数も40,000歩超えていた。
26番金剛頂寺の石段
金剛頂寺/山門
金剛頂寺/本堂
がん封じの椿
石版レリーフ
道の駅キラメッセ室戸
太平洋
羽根岬







