平成29年
10月25日晴れ 晴れて気持ちの良い朝だ。奥さんが、昨日の汗だらけの洗濯物を、キチンとたたんで渡してくれた。ありがたかった。朝食後、高知県最初の24番最御崎寺を目指し早めに出た。道路沿いに『世界室戸ジオパークセンター』を見かけ、トイレに寄った。職員の女性がリュック、菅笠、杖を預かってくれたので、30分ほど展示物を見た。お大師さんの声を再現した展示コーナーがあったので聞いたが、太く威厳のある声だった。国道に戻り歩いていると、P君が自販機で飲料水を買っていた。菅笠を被っているが、前後が逆だったので、直してやった。菅笠は梵字が書かれている方が前だ。外国人には分からないし、そこまで気にかけないのかと思う。先へ急ぐと、ずっと遠くに白い像が見えてきた。圧倒される巨大な『室戸青年大師像』が、訪れるお遍路さんを迎えてくれるのだ。『弘法大師行水の池』という海に面した池を見て回り、楽しみにしていた『御厨人窟』に行った。岩山に二つの洞窟がある。『御厨人窟』と『神明窟』の二つがあり、お大師さんが『虚空蔵求聞持法』を修行した伝説の洞窟だ。現在は、落石のため中に入る事が許されていないので、外観だけしか見られない。お寺ではないけれど、番外札所になっているので納経をしてもらった。納経所には、年配のおばあさんがいて「北海道には行ったことがないけれど、ずいぶん遠いところから来たんだねぇ。」と言われた。納経帳の88番のページの次を開き、「ここは本山で納経してもらうところだから、一つ開けて。」と、他の霊場と同じように御朱印と墨書し、お姿を渡してくれた。いずれの霊場も、本堂と大師堂には納札箱と納経箱が対で設置してある。どこもそろってシルバーの同じ大きさの箱だ。般若心経を写経した用紙を納めるお遍路さんは納経箱へ、仏前勤行次第を読経したお遍路さんは納札箱へ入れるようになっている。般若心経を2枚×88ヶ所で176枚納めるお遍路さんもいるのだが、納札のお遍路さんが圧倒的に多い。どちらでもよいのだが、御厨人窟には納札箱も納経箱もなかった。兵庫県から、車で観光に来たと言う二人の女性に話しかけられた。「どちらからですか?地元ですか?」「北海道です。」「えっ!北海道!札幌ですか?」「いいえ、網走の方、自然遺産の知床です。オホーツク海。」「知床!知床のどこですか?」聞かれるといつも、こんな感じでやり取りをしていた。一回の返事で終わりたいので、聞かれたら「北海道、世界遺産の知床です。」と言うようにした。こちらの人は、北海道と言えば札幌なのだ。最御崎寺へはきつくはないけれど、台風で木が倒れている細い山道を登って行った。境内に、大きな『虚空蔵菩薩像』が鎮座していた。息子の守り本尊なので、真言を唱え合掌し無病息災をお願いした。納経を済ませ坂を少し下りると、『室戸岬灯台』の看板を見つけた。大きなレンズの燈台が、船の航行する静かな海に向かって建っていた。室戸岬をグルッと回り、太平洋を望む海岸線を歩いて、25番津照寺へ向かった。津照寺近くのYショップというコンビニで、パンとお茶を買った。店主が「先日は、アフリカからもお遍路に来ていた。」と、外に出て、遠くに見える津照寺への道を教えてくれた。四国遍路の道を世界遺産に登録する運動が盛んで、世界中にテレビ番組等で紹介されている。外国人のお遍路さんが、増えている要因だ。そう言えばフランス人女性のEさんも、フランス語で書かれた地図や案内本を持っていた。太平洋を望む小高い丘の上にある津照寺は、朱塗りの山門があざやかで、狭い急な石段の先に本堂と大師堂があった。『スズメバチ注意』の看板があったので、急いで納経所まで下りた。御本尊の『延命地蔵』を、『楫取(かじとり)地蔵』ともいうので、海に関連したお地蔵様のようだ。道幅の狭い商店街を通り抜けて、街外れの『ファミリーロッジ旅籠屋』に着いた。前日、26番金剛頂寺の宿坊に電話を入れたけれど、行事と重なりこの日の宿坊は臨時休業をしていた。代わりに旅籠屋という時代劇風の響きが気に入り、予約していた。『ファミリーロッジ旅籠屋』は素泊まりのみだけれど、朝食には簡単なパンとコーヒーが用意してある。部屋はベッドで、風呂もきれいで気分が良かった。左の股関節が痛くて、民宿の畳に寝るのは苦痛だったが、7番十楽寺以来のベッドでとても楽だった。『お姿』を貰い忘れた熊谷寺に電話をすると、帰宅後に郵送してもらえる事になってひと安心した。風呂に入って鏡をのぞいたら、唇に白い水ぶくれが出来ていた。カミさんに電話を入れたら、「ビタミンB2不足だから、肉を食べたら。」と言う。毎日、大汗をかいて歩くので当然だ。夕食は近くのお好み焼き店に入り、鶏肉の唐揚げやお好み焼きを注文し、ビールで流し込んだ。しばらくぶりの唐揚げは、本当に旨かった。お遍路中は、四つ足動物の肉を食べないのが基本らしいので、なるべく避けていた。パンとお茶を買いに、コンビニを探したが見つからず、自転車で配達途中の青年に訊ねたら、親切に教えてくれた。しばらく歩くと、先ほどの配達を終えた青年が交差点にいた。私が分からないだろうと、待っていてくれたらしい。再度、丁寧に教えてくれた。「高知の人は親切なもんだな。」と、嬉しくなった。ローソンで買い物をして、お金を引き出した。民宿はカードでの支払いに対応していないので、少し不便だ。自販機を多用するので、常に少額紙幣で二万円前後の現金を持っている。
ロッジおざき前の日の出
夫婦岩
道標
室戸世界ジオパークセンター
室戸青年大師像
室戸青年大師像
弘法大師行水の池
ビシャゴ岩
御厨人窟/番外札所
御厨人窟
御厨人窟に隣接する神明窟
道標
遍路道
24番最御崎寺/本堂
室戸岬灯台
25番津照寺
津照寺石段
















