品のない話だが、戦後の生活を語るには、多分、映像記録はないと思う、珍風景なので描いた。
公衆トイレのない時代であった。
農作業を含めた、屋外活動の合間に、用便をもよおした場合の処置方法について・・当時は!
“大便”の方は、日に一度程度なので、非常時は別として、計画的に外出前に放出しておけば問題はない。
然しながら、“小便”の方は、尿意が突然にやって来ることが多い。
ほとんどの農家の玄関脇には、小便所があった。・・・単純な“便壺穴”であったが。
地下足袋(ジカタビ)を脱ぐ必要がないようにと、生活の知恵であったと思う。
自宅が近ければ駆け込むことで、済まされるが、遠い場合はそうはいかない。
そこらの空き地に“放尿”するしかない。犬が電柱にオシッコするように・・・。
男姓の場合、ズボンの前の穴から“蛇口(コック)”を出すだけで済む、現在でも見られる光景である。
男姓の子供達は、“ションベン小僧”のように、競って、飛ばしっこをした、見慣れた光景でもあった。
女性の場合、尻を露出することになるので、隠れるように適当な場所で、済ませたに違いない。
婦人方の普段着は、まだ、“着物(和服)”であった、下着はパンツでなく、襦袢や腰巻である。
現代風に言えば、“ノーパン”である。
着物姿での、用便は、大小にかかわらず、難儀であったことと想像する。
男子の場合は、蛇口(銃身)の向きを容易に操作できるが、女性は、そうはいかない。
外出時、突然の尿意が襲ってきた場合、近くにトイレがない場合が、起こり得る。
着物の裾をわずかに絡げ、中腰の姿勢で、“事を済ませる”風景を、偶に見た。
放出角度と水勢を調整し、着物を濡らさない放尿は、“カミワザ(神技)”としか思えなかった。
今では、衝撃的な光景であるが、記録として、残しておきたい“生活風習”・・・と思う。