「へ?」
写真をみた霊感だか、霊能力だかあるって言う人が叫んだ。
興味本位、半分冷やかし、半分藁つかみ状態で、この人のとこに来た。
そしたら、なにか写真みせろって言うから携帯のなかをあさってた。
「あなた、お墓参りをしてますか?」
「・・・」
「していないでしょう?」
「・・・なして?」
「あなたが思うように人生を歩めないのは、そのせいです。」
「・・・」
考えた。
「そうなの?」
「あなたの先祖に由来します。」
「どんな?」
「まず、お墓を綺麗にしなさい。それからお墓参りをしなさい。」
「はあ・・・。」
「お墓が荒れ放題で、お墓参りに来ないと先祖が怒っているのがこの写真から見えるんです」
「見えるの?」
「見えると言うより、聞こえるんです。」
「なんて?」
「ですから、お墓を大切にしなさいと。」
「ほう・・・
・・・
おかしくないですか?」
「何がですか。」
「別の人じゃないですか?」
「おかしいのはあなたの方ですよ。このお写真から別の霊が語りかけるわけ無いじゃないですか!
これは明らかにあなたのものですよ?」
「・・・」
「私の言ってること、わかりますか?」
「・・・。」
彼女は少し口を皮肉っぽく歪めて俺を見つめた。
「わかりません。
てか、心霊写真なの。これ?」
俺の表情は変わらない。動揺もしないし、笑いもしない。
心霊写真そのものが怖いとおもうことが、そもそもないし。
それが彼女を怒らせた見たいス。
呆れたように溜息をついてこう言いました。
「そうですよ!携帯といえども写ってしまうんです!
なぜお墓参りをしないんですか?ご先祖様は怒っているんですよ?」
「・・・」
「私の話、わかりませんか?」
「わかりません。
てか、やっぱ心霊写真なの。これ?」
「心霊写真です!なぜわからないんですか!そんなことでは一生あなたは報われませんよ!」
「いや、ご先祖様、怒ってないんじゃないかな・・・。」
「いいえ、怒ってます!」
「そ~かな~…(~へ~?」
「ほら!あなたの傍にお一人立ってらっしゃるのが判りませんか?睨んでおいでですよ?」
「いるんだ・・・。でも睨んでないでしょ。もしそうだとしたら、それは『あなたを』じゃないんですか?」
「私は、ご先祖様のお言葉をお伝えしてるんですよ?」
「ホントにぃ~?(¬ ¬)」
「信じない!?」
「ん~・・・。」
「冷やかしですか?迷惑です!」
「だって、そりゃ、人間さ、自信無くすころもあるじゃん。
当たる、当たるみんなが言うからさあ。
それじゃ俺も、ってさ・・・。藁っていうか、鰯の頭っていうか・・・」
「Jさん、実家は東北で、東京に出てきて長いとおっしゃってましたよね?」
「はい・・・。」
「一体、これまでに何度帰省されましたか?この20年以上もの間に。」
「・・・」
霊能者はしてやったりな顔をした。
けれど、そんな程度の質問、され飽きてる。きっぱり言ってやった。
「毎年。盆、暮れ。必ず。ぼんくれ息子と呼ばれるんですけど。」
「・・・。」
霊能者はちょっと言葉が出なくなった。
「帰省しても、お墓参りはしてらっしゃらないですよね?」
口調が強くなったぞ?
「だから、なんで決めつけんの。
てかさ、先入観で物しゃべってるでしょ。」
「何をおっしゃるんですか!
馬鹿にするにも程がある!
なんのおつもりですか、こんな写真撮っておいて!」
「だってさあ、墓参りは盆、暮れのたんびにやってますよ?
お墓だって実は見えてないでしょ?汚れてるなんて嘘だもの。
正月か春には除草剤蒔くんです。
雪融けや雨の水で地面に沁みこむように。
そうすると、墓所は雑草が生えないから、落ち葉を整理するだけで綺麗に保てるんです!」
霊能者が固まった。
2秒ほどで軽く咳払いして。
「・・・。け、けど、ご先祖様が・・・」
「怒ってませんて。
俺ンちは2回の彼岸、盆、一つ前の故人の命日、除草剤蒔き。
誰か彼かが墓参りしてんの。」
「・・・お墓が汚れ・・・」
「汚れてませんて。
仮に汚れてるとしても、カラスの糞とかでしょ?
墓参り行った時は必ず掃除してんの!
カラスの糞で一々怒ってたら、世の中怨霊だらけで誰一人平安に暮らせないでしょ。何?もしかしてだからみんな貧乏なんだって言うの?」
「そういう・・・」
「ああ、そう。あの世も金次第なら恨みつらみも金次第なんだ?金持ちは墓が綺麗だから金持ちなんだ。金払って掃除させてたって綺麗ならなんでもいいんだ?」
「誠意が・・・」
「よくさ、詐欺が逮捕されたってさ、刑務所のなかから毎月1円入れてりゃ被害者にお金返す誠意があるって認められるんだって?
本人すっかり忘れてたってお墓が機械的に綺麗ならいいんだ?」
「・・・。」
「なんかさあ、東京に住んでるとか言ったもんだから、適当に言やよせげにさ。
挙句にゃ独身男で一人暮らしだから、だらしないもんだと?
道理でやたら質問多いと思ったわ。前情報多すぎだよ、あんた。
なんか、俺は見た目が酒も呑みそうで、田舎にも帰らないで、親には数年に一度しか連絡しないくらいの瘋癲っぽいらしんだよね。
でも実は違うの。」
「・・・。」
「甘めぇんだよなあ。」
「で・・・でも、その写真が・・・」
「なんか写真見せろっていうから。
自分の印画写真なんが持ち歩かないよね、普通。
しょうがない、携帯だよ。
どれが良いかと思って携帯の中で選んでたらあんたがこの写真に飛びついたンじゃないかさ。」
「自分でも驚いてたじゃないですか・・・。」
「そうだよ?改めてみたらカッコいいな、この写真って唸っただけじゃん。なんで悪霊なの、それで?」
「こんな写真、普通は無いから、てっきり・・・。」
「てっきりもこっきりもないよ。エセだなあ、もう・・・。」
「そんな写真・・・。」
「まだ言うか。」
「だって、それは・・・」
「なんでもねーよ。手ぶれだよ!」
「え・・・!?」
「撮る時、内側カメラにしちゃったの!
慌てて外側にしようとしたら、肘がガクンてなっちゃったの。
時々あるでしょ、そういうこと?
そしたら触っちゃったのシャッター。
結果がこれよ。
高性能なのね、最近の携帯。画素もでかいから、こんな美しくブレちゃうの。」
「でも、それは、悪霊の仕業・・・」
「な、わけないっしょ?手ブレだよ手ブレ!」
「その・・・。」
「墓参りも、掃除もする!
仏壇も花はちゃんと取り返るし!
だから先祖は怒ってない!
写真は手ブレ!
うちの先祖を悪霊呼ばわりすな!
もっと故人を大切にしなさい!」
「う・・・。」
「?」
「うぐうううううううう・・・・。」
突然霊能者は苦しみ始めた。
「まあた、まあた。ずるいなあ、もう(笑)」
「ぐぐぐぐぐぐぐ・・・。」
「あれ?」
「うぐぐぐぐぐぐ・・・。」
「まじ?」
ついに彼女は泡を吹いて倒れた。
さすがの俺も救急車呼んだ。
なんてこった。
どうやら、あまりに適当な霊界侮辱に彼女の先祖が怒ったんじゃなかろうか?
悪霊払い呼んでやったほうがいいかな・・・。
はい、どんと晴れ。