2019年12月30日に開幕した「第98回 全国高校サッカー選手権大会」も遂にファイナルを迎えた。
決勝のカードは、昨年度王者にして今季プレミアリーグを制した高校年代最高峰のチーム青森県代表「青森山田高等学校(以下、青森山田)」 対 古豪であり24年ぶり単独優勝を目指すサッカー王国静岡県代表「静岡学園高等学校(以下、静岡学園)」の対戦。
青森山田にしてみれば連覇とともに今季2冠がかかる一戦であり、静岡学園にしてみればサッカー王国復権の狼煙とともに悲願の単独優勝がかかる一戦であった。
決勝の舞台、埼玉スタジアム2002も超満員の中、14時10分に試合がキックオフ。
開始早々の出方としては、静岡学園は準決勝と同様にこれまで積み重ねてきたスタイルを変えることなく試合に入ったのに対し、青森山田は準決勝のように受け手に回ることなく、前線から連動してアタックを仕掛けていくオープンなスタイルで取り掛かった。矛の静岡学園、盾の青森山田ではなく、お互いの全力を出し合うオープンなスタイルで始まった決勝は、試合展開を面白くさせる予感を感じさせていた。
10分までの序盤、お互いに中盤までは運ぶものフィニッシュまで至るシーンを作れず、イーブンな様相で試合が添加する中、徐々に青森山田がボールを保持する時間帯が増えていた。と、イーブンな状況から早くも試合が動いた。
11分、中・左サイドからフリーキックを得た青森山田が勝負強さを見せ、MF6古宿からニアサイドに入ったアーリーなボールをDF5藤原が頭で合わせ幸先の良い先制点を取る。
1-0と試合が動いてもされても展開は大きく変わることなく、青森山田は時折受けるカウンターにもディフェンスラインがチャレンジ&カバー、マーカーの受け渡し、ポジションのスライドをしっかりとこなし、危険なシーンをほとんど作らせない。対する静岡学園はスタイルとする個の技術、パスワークとドリブルからの崩しも先述のブロックを崩すまでに至らず、本来のリズムに乗れない時間帯が続いた。
こうそうしているうちに再び青森山田が静岡学園の僅かなミスを逃さず追加点を奪う。
静岡学園のディフェンスラインへのチェイスから高い位置でボールを奪取しては、MF7武田へバイタルエリア左へのスルーパスから抜け出し、ゴールキーパーを釣り出す形を作り出し、僅かのタッチの差でキーパーのブロックが足にかかりPKを得る。これをMF7武田が落ち着いて決めスコアを2-0とリードを奪う。
しかしながら、高校サッカーにおいて2-0はセーフティスコアではなく、より集中が必要となる点差で、1点返されるだけで相手に勢いを与え、あっという間に逆転を許す点差でもある。それもあり、早いうちに追加点を奪いたい青森山田であったがその後は決め損ねるシーンを何度か迎えた。
そうこうしているうちに変わらず青森山田の高度に組織化されつけ入る隙間がないブロックに徐々に慣れ、「静学スタイル」を取り戻していく。
前半もアディショナルタイムに入った1分過ぎに得た右サイドからのフリーキック。一度はゴール前からはじき出されたもののクリアが甘くゴールに詰めたシュートが中央付近にこぼれたところ、セーフティクリアのところトラップを選択し、トラップからこぼれたボールをDF5中谷がシュートしたところ、キーパーに触られながらもゴールへと吸い込まれた。意地の1点であり、反撃の狼煙となる1点を静岡学園があげスコアを2-1と1点差にしたところでハーフタイムを迎えた。
前半、攻める静岡学園、受ける青森山田の様相から異なり、王者らしくオールラウンドに組織的に戦うスタイルでオープンに戦う青森山田、ブレずに「静学スタイル」で個の技術、パスワークとドリブルの組み合わせで攻撃的に攻め立てる静岡学園の試合展開となり、その内容は年々進化する高校サッカーの最先端であり、最高峰の戦いで一進一退を繰り返す非常に濃いものであった。
後半、リードしている青森山田がどういった戦いを選んでくるのか、逆転も視野にとらえた静岡学園が戦い方に変化をつけてくるのか、まだまだ試合展開がわからないまま後半を迎える。
後半に静岡学園が選手を変え、MF18藤田→MF19草柳、システムもボランチにMF8朝倉、MF16井堀、セントラルにMF14小山、左サイドにMF19草柳と変化を付ける。
それが功を奏してか、前半のアディショナルタイムのゴールの勢いそのままに静岡学園がペースを握る。
対して青森山田は受ける形であったが、大きく守備ブロックは崩れることなく、1点リードを保持しながら試合が進む。
それでも徐々に静岡学園が本来の形を作り始める。
個の技術の高さから中盤でボールをしっかり保持する時間がつくれリズムに乗り始めたのに加え、ディフェンスラインから1枚上げて攻撃に厚みを加え、青森山田に揺さぶりをかけ始める。そうしている内に青森山田の守備に乱れが見られ、最終ラインと中盤のラインに開きが生まれたり、セカンドボールを拾いきれない、トップへボールを預けることができず、拾われては静岡学園の技術の前に寄せきれないシーンが見え始める。
そして、61分に静岡学園がその本領を発揮し、ゴールをこじ開ける。
左サイドの後半から入ったMF19草柳がペナルティ左から中央へカットインを仕掛け、その中央で構えていたFW9加納にボールを通す。そこからDF5藤原を背負いながらも反転し、ゴール左隅に同点ゴールを突き刺す。
追い付かれた青森山田、追い付いた静岡学園。
ここで両者の試合運びに差が出始め、2点先行で守備的に気持ちが働いてしまい、前半立ち上がりのようなプレッシャーを掛けることができず2失点を喫し相手に勢いを与えてしまった青森山田。対して、2点先行されても自分達が貫いてきた「静学スタイル」を続けたことによって、活路を見出だし、同点に追い付いた静岡学園。
後半も残り30分を切り、いよいよ試合も大詰めを迎える。
同点以降、両校の一進一退の攻防が続き、静岡学園の個の技術からの打開を繰り返すなか、プレミアリーグで培われてきた鉄壁とも云える守備でことごとくそれを跳ね返し、一撃のカウンターを仕掛ける青森山田であったが、どちらかと言えば静岡学園が本来の形を取り戻し、落ち着いてプレーをし攻撃を繰り返しているように感じられた。
そして、決着をつける決勝ゴールが生まれる。
80分に静岡学園が青森山田の攻撃を凌ぎ、攻撃に転じ幾度となく個人からの仕掛けから左サイドからのフリーキックを得る。
そのフリーキックから放たれたクロスは、「絶妙」ともいえる軌道を描き、ゴール前に差し掛かるときには、「これは入った」と思わせる最高のキックで、DF5中谷がファーサイドフリーの状態でゴールへ押し込みスコアを2-3。劇的な逆転ゴールで、静岡学園が大きく勝利を手繰り寄せた。
しかしながら、高校サッカーは本当に何が起こるか分からない。そして、ここで簡単に終わらないのが青森山田である。後半も残り10分、意地の戦いである。
逆転を許した青森山田は、80分を迎えるまでの間の選手交代のほか、遠くからゴールをこじ開けんとDF2内田→DF19鈴木を投入し、ロングスロー攻勢で一気にゴール前へ仕掛ける。
時に惜しいシーンを作るも静岡学園の最後の守備の粘りの前に割ることができず、時間が過ぎていく。そうしたなかでも静岡学園は自分達のスタイルを崩すことなく、最後の最後まで個の技術、打開で攻め続けたのは、青森山田に対しての最大のリスペクトであり、決勝の舞台の最後を味気なくさせない、敬意を表するほどのプレーを最後まで続けていた。
そして、その時は来た。
長い、長いホイッスル。
それと同時に、選手みなピッチに倒れ混み、各々の感情を露にしていた。
改元、例和初の王者にたったのは、実に24年ぶり、そして初の単独優勝でサッカー王国復権を遂げた静岡県代表「静岡学園高等学校」であった。
近年、成長著しい高校サッカーにおいて、これほどまでにハイレベルな攻防を繰り広げた両者に、勝者・敗者関係なく最大級の賛辞を送りたい。
勝負事ゆえ勝者・敗者は必ず生まれてしまうが、結果としてそれが生まれたとしても、両者とも頂点に立つのに相応しい試合を転じてくれたことは、一、高校サッカーファンとして本当に感謝したい。