《アベノミクスの舞台裏(1)》 | 仁 ~JINブログ~

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《アベノミクスの舞台裏(1)》


政権交代以来、アベノミクスが流行語になった。
円は急落、株は急騰、政治家は日銀総裁選びに慌ただしいが、マスコミの論調を見てもネットを見ても何だか経済論議のポイントがずれているような気がしてならない。


はっきり言って、今の経済政策のポイントは来年の消費税増税に尽きる。


消費税は、高齢社会を見据えての直間比率の是正という大義名分から89年4月に初めて導入された(税率は3%)。
ようするに、働く人の割合が減ると働いて得たお金から税金を賄うのは負担が大きすぎるので、みんなで平等に負担しよう、というわけだ。


数十年単位の方向としては間違っていないかもしれないが、現在の日本で消費税を導入する、あるいは税率を上げる、というハードルはとても高い。


一つの理由は、日本では年末調整が自動的になされることである。
官僚や政治家は、国民に税金の使い方についてあれこれと注文を付けられては面倒なので、税金をなるべく目立たないように集めようと考える。
年末調整はそのために一役買っている制度だ。
しかし所得税の納税が自動的だと、所得税のような直接税を下げ、間接税を上げた時、納税額は同じでも増税だけが非常に目立ってしまう。
特に、女性の専業主婦比率が高かった日本では、増税だけが余計にクローズアップされることになる。
そんな状況で、消費税を導入したのは快挙だと言って良い。


もう一つ重要な理由は、日本が慢性的な需要不足の国であるということだ。
消費税は、いわば、財やサービスの購入に対してペナルティーをかけることと同じなので、需要が不足している世の中では経済的なコストが非常に高い。


「高齢社会に備えた直間比率の是正」という大義名分があっても、自然な流れは、供給不足になってからそれを行うことだ。
つまり、まず働く人が減る一方、政府が借金をして社会保障でどんどんお金をばらまくと、物やサービスの需要が不足して物の値段が上がり始める。
その時に「消費には税金をかけますよ」とすれば、インフレも抑えられるし、財政収支も改善する。


日本の高齢化は急速なので、多くの人はそうした事態がもっと早く訪れると思っていた。
消費税が35年も前から断続的に議論されてきたのもそれが一因だろう。
だが実際には、導入から24年経った今も日本で全般的な供給不足も、物価上昇も、労働者の不足も起っていない。
これは、やはり低コストの物資が新興国からどんどん輸入されたり、サービスを低コストで海外にアウトソースできるようになったことが大きい。
もしこうした影響がなかったら、例えばITI命の結果、システムエンジニアは花形の高給取りになっていたかも知れない。


しかし、財務省としてはともかくこの消費税を上げたくて仕方がない。
金融市場に気を配らなくてはならない政府債務の膨張は気分が悪いし、何より税収が増えれば歳出面でも余裕が出て権限が拡大するからだ。


一方で、これを上げるのが難しいのを一番良く知っているのも財務省である。


消費税を5%より高い水準にする案が最初に出たのはいつだったろうか。
私の記憶が正しければ、それは19年も前の94年早々に細川内閣が発表した国民福祉税構想で税率は7%~10%。まだ高校生だった私は、財務省(旧大蔵省)が「5%では社会保障を賄い切れない」と強気に発表したのを新聞で読んだ。
数十年ぶりに自民党一党支配が崩れて生まれた正に右も左も分からない寄せ集めの連立政権は結局この構想を実現できずに短命に終わったが、政治が弱いところに財務省がつけ込んだことは想像に難くない。



97年には政策を総動員して何とか5%への引き上げを果たしたが、その後日本は15年にわたるゼロインフレに沈んだ。


その15年後、依然として需要も物価も雇用も弱いままだが政府債務危機を巧みに煽った財務省の戦略が功を奏し、ついに消費税増税法案を通すことに成功した。


私はこの増税が更に物やサービスの需給を悪化させると思うが増税後の野田前首相の自信に満ちた表情を見たとき、ともかく政府は「増税が必要」という「コンセンサス作り」に成功したのだな、と感じた。


そうは言っても、景気があまりに悪ければ増税中止は避けられない。
だが都合の良い事に、財政再建を掲げる民主党は先の衆議院選で大敗し、新たな自民党政権の下、大盤振る舞いの経済政策でひとまず増税する来春迄のまでの景気の心配はなくなったようだ。


現在の状況は株式市場がバブった89年、97年の消費増税前と瓜二つである。



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【引用元記事:BLOGOS】