~過去のうつ病・パニック障害のことを綴ってます~



「どうですか」



グレイヘアのベートーベン部屋は、毎回その一言で始まる。

日常のことを話すだけ。

その頃働かない頭でうつ病書籍を読んでいた。



「その人の本は今のあなたには合わないですよ」



確かに人格否定的な文面が多く、Drの意見もあり読むのを止めた。




診察後気持ちを上向きにするために地下街へ向かった。

大好きな天神。


"そうだ!口紅👄を買おう!"


あるお店に入り、口紅を選ぶ。



"元気が出るように赤にしよう"



「試しにお付け致しましょうか」


はつらつとした店員さん。キラキラして見えた。

彼女は筆で赤をすくい、私の方を見た。




その時でした。


彼女の視線と筆先が、スローモーションで私の口元へ刃のように迫ってくる。


急に心臓がバクバクなる。

冷汗が全身滝のように流れる。

震えが私の右肩に触れる彼女に伝わるんじゃないか。

戸惑い、呼吸があらがう。

筆が口をなぞりだすと、

目の前が霞みがかってきた。



ヤバい!倒れる!

こんなとこで倒れるなんて恥ずかしい!

しっかり!目を覚ませ!起きろ―!




「いかがですか」


霧がかってはっきり見えない。


「…また来ます…」


店を飛び出し足底を打ちつけるように地下街を歩いた。



"うつでパニックまでって"

"どうなっちゃってるの⁉️"



どうやって帰ったか覚えていない。

寝室のドアを開け、スライムに身を預けるしかなかった。



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まだ病気を受け入れていない頃。何かの間違いじゃないか。こんな病気になってる場合じゃないのよ、私。仕事もあるし、家のことだって…


そんな時仕事してキラキラした店員さん見て、劣等感感じたんでしょうね。体全身で拒絶。


普通気を失ってしまうところ、さすがです。私の[人にどう見られるか]センサーがいかに強靭であるかを物語るエピソードでした。



次回、バラバラになります。