嵐小説・星になるまで~“ever” after story③ | 日々是嵐×ミステリー

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2013年、嵐とミステリーが好きでたまらなくて始めたこのブログ。今ではほぼ嵐のことしか書いてませんが…(*^^*)

たまに自分ゴトや、LOVEと萌えを楽しくマイペースに書いています。


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【第3話】






それからも、櫻井先輩とはすれ違いの日々が続いた。
私が自分の仕事を終えて帰る時も、櫻井先輩は、凄い勢いでパソコンのキーボードを叩いているか、出先から戻っていないかどちらかだ。


たまにこっそり、櫻井さんのデスクにコーヒーを置いて帰ると、翌日、私の机に「ありがとう」と小さいフセンが貼ってあって、ひそかにキュンとしたりしていた。



ある日、珍しく昼間もデスクに櫻井さんがいて、どうしても気になってそちらばかり見てしまった。


すると、視線に気づいたのか、櫻井さんもふっと顔を上げ、こっちを見た。
目が合うと、顔をしかめ、首を振る。


(あ、見ちゃダメって怒られた)

あわてて目を逸らし、私もパソコンのモニターに視線を戻した。


(そ、そうだよね。仕事しなきゃ)

どうしても、櫻井さんの方を見そうになる自分に鍵をかけ、仕事に集中することにした。


その時、ピロリン、と仕事メールの到着音がした。

作業中の画面をいくつか閉じて、アウトルックを呼び出すと、新着メールが1 件。




(……!!)


差出人は、櫻井課長だった。


思わずそちらを見たが、彼はクールに下を向いて、素知らぬ顔をしていた。



内容は、仕事上の指示で、今夜の残業を命じるものだった。


(ああ、ドキドキしちゃった…)


社内メールはセキュリティが厳しく、私用で使っていないか、システム管理者に内容を見られていると聞いたこともあった。


それでも、特別なメッセージをちょっとは期待したけど…


仕事人間の櫻井先輩が、公私混同するはずもなかった。



私は大人しく、残業了承のメールを櫻井課長に送った。



*****



櫻井先輩は夕方から外出してしまい、仕方なく戻りを待っていると、いつの間にか夜のオフィスは私一人になった。



(遅いなあ。本当に忙しいんだな…)

そう急ぎでもない、自分の資料の作成をしていると、ようやく櫻井さんが帰社してきた。


「お疲れ様です」

そう言って立ち上がると、櫻井さんが疲れた表情で、ネクタイに指を突っ込んで緩めた。


「ああ、ごめん。遅くなったね」

鞄を自席に放り投げると、ふうっと椅子に深く座った。


「コーヒーでも淹れましょうか?」

声をかけると、疲れた目元が嬉しそうに微笑んだ。


「うん。…ありがと」

こんなに和んだ櫻井先輩の顔を見るのは、久しぶりだった。





やがて、私の淹れたコーヒーの薫りが、部屋中に満ちた。

少しでも、櫻井さんの癒しになればいいのだけど…。



「あぁ……うまい。シャンとするよ」


満足そうにマグカップをすする先輩の笑顔は、3年前と変わらず優しい。

久しぶりに櫻井先輩のためにコーヒーを淹れられて、私も嬉しかった。





一息入れた櫻井さんは、上司らしく、テキパキと指示を出した


間もなく大きなプレゼンがあるようで、そのための資料作りを補助してほしいとのことだった。

翌日までに必要な範囲を聞いて、さっそく作業に取り掛かる。



資料を見ているうちに、気になることがあった。


「あのう…聞いてもいいですか」

「なに?まめちゃん」


昼間は名字で呼ぶのに、二人きりだと愛称になる。
突然の彼女感に、思わず顔がにやけてしまう。


「い、いえ、あの…資料に、やたら西日本のデータが出てくるなあと思って…」


何気なく言うと、急に櫻井さんは黙り込んだ。



「・・・・・・」

口元を手で覆い、目が強くなった。



(えっ…何かまずいことを聞いたかな)


不安になるくらいの沈黙のあと、櫻井さんは、覚悟を決めたように、ふうっと溜息をもらした。



(続く)