摩訶不思議・仙台は○○の街(3)~超高層ビルが低い!?少ない!?~ | 暫定・綴れば愉快だ宇都宮 熱視線blog(旧・せんだい熱視線 ジミ都市blog)

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巷ではあるあるで、都会のバロメーターは超高層ビルの数と言う話を聞く。見栄えとして明確に分かりやすいからだ。これだけで決まるものでも無いが、ここでは超高層ビルと言うテーマにフォーカスしてみよう。

 

よく仙台にある超高層ビルは低いし少ないのでは!?そんな指摘があるようだ。私も、仙台に凄く高いビルがあると言う認識は無いし、もっとあってもいいと思っている位だ。

 

そもそも、超高層ビルとは何なのか?具体的な定義は存在しない。人によってまちまち、人生いろいろ、感覚もいろいろなのである。私の独断になるが、ここでは私定義である”高さ100m以上”としたい。

 

まず、超高層ビルについて少しおさらいしてみる。日本に初めて登場するのは、東京都千代田区に1968年竣工した「霞が関ビルディング」(高さ147m 36階)である。意外だが、1961年までは”百尺規制”と呼ばれる高さ制限があり、国内に高さ31m以上のビルは建てられなかった

 

しかし、建築基準法の改正により、”特定街区制度””容積地区制度”が設けられ、一定の要件を満たせれば、事実上高さ制限は撤廃(後に完全に撤廃)されると、競うように超高層ビルが建設されるようになった。舞台となったのは、淀橋浄水場跡地の再開発が進められた新宿駅西口である。

 

ここから高さ日本一のビルが入れ替わって行く。国内初の高さ200m超のビルとなった「新宿住友ビル」(1974年3月竣工 高さ210.3m 52階)、僅か半年後には「新宿三井ビル」(1974年9月竣工 高さ225m 55階)、オープン時のTVCMが印象深い「サンシャイン60」(1980年竣工 高さ239.7m 60階)が豊島区東池袋に誕生した。

 

”バブルの塔”と揶揄された「東京都庁第一本庁舎」(1990年竣工 高さ243.4m 48階)で日本一の座を西新宿が奪還したのも束の間、3年後には神奈川県横浜市に「横浜ランドマークタワー」(1993年竣工 高さ296.33m 70階)がオープンした。

 

低迷する関西経済の復活を賭け、国内最大の民鉄である近畿日本鉄道「あべのハルカス」(2014年竣工 高さ300m 60階)を大阪市阿倍野区に建設し、国内初の高さ300m超ビルとなった。しかし、千代田区大手町に「Torch Tower」(2027年竣工予定 高さ390m 63階)を建設中で、高さ日本一の座が34年ぶりに東京へ戻って来る予定だ。

 

仙台の話に戻ろう。

 

仙台、東北初の超高層ビルは平成まで待たねばならなかった。前史に触れると、東北初のインテリジェントビルで一番高かったのは「電力ビル」(1960年竣工 9階)で、2002年4月までは東北電力本店が入っていた。(本店は2002年に竣工した、青葉区花京院の「エナジースクエア」へ移転。こちらも高さ148.1m 28階の超高層ビル)

 

築60年経過したが、リニューアル工事を施し、現役バリバリの「電力ビル」。

(※画像はyahoo!画像より)

 

電力ビルの高さは不明なため、色々調べてみたが、よく分からなかった。竣工当時は”百尺規制”が残っていたため、31m以下なのは確かな筈だが・・・

 

その後、東北一高いビルは「住友生命仙台ビル」(後に仙台キャピタルタワー 1975年竣工 高さ67.3m 19階)「仙台第一生命タワービルディング」(1985年竣工 高さ90.3m 21階)と変わったが、昭和の間に高さ100m以上の超高層ビルが仙台に誕生する事は無かった。

 

竣工から35年を超えたが、外観を見ても古さを感じさせない「仙台第一生命タワービルディング」。

(※画像はyahoo!画像より)

時代は平成となり、1989年は仙台にとって大きな節目の年になった。市制施行100周年を迎え、東北初の政令指定都市となり、バブル景気の真っ最中だった頃、青葉区五橋に東北初の高さ100m超の文字通り”超高層ビル”がお目見えした。

 

通称”SS30"として親しまれている「住友生命仙台中央ビル」(1989年竣工 高さ172m 31階)で、実は竣工した年、私は就職試験を受けに、このビルを訪れた事がある。単純な私は「ここに配属されるのかな?」と思っていたが、入社すると配属は新宿だった。東京に戻るわ、昔から馴染む新宿だわで、ホッとした記憶がある。結局、SS30内にある東北支社へ異動する事は卒業するまで無かった。

 

約20年程、東北一の座を守ったが、SS30のほぼ向かい側に「仙台トラストタワー」(2010年竣工 高さ180m 37階)がオープンし、現在はこのビルが東北一高いビルである。

 

仙台のランドマークはTV塔だけじゃない!SS30(右側)仙台トラストタワー(左側)も存在感が際立つ。

 

ここまで振り返ってみたが、いかがだっただろうか?高さ100m超のビルは、「アエル」(1998年竣工 高さ145.5m 31階)「エナジースクエア」(2002年竣工 高さ148.1m 28階)「NTTドコモ東北ビル」(2004年竣工 高さ150m 21階)、先に挙げたSS30仙台トラストタワーと5つある。

 

高さ200m超が無いのは確かに低いと言えるかもしれない。だが、他都市が200m超のビルが多いかと言われると何とも微妙である。街の規模や人口の違いはあれど、比較されやすい札仙広福(札幌・仙台・広島・福岡)を比べると、似たり寄ったりな感じを受ける。ただ、仙台が低いと感じるのは”タワマン”ことタワーマンションで、高さ100m超の物件はそう多くない。他の都市は100m超のタワマンが幾つもあり、それを含めるから、仙台のビルは低いと感じてしまうのだろう。

 

私の場合、超高層ビルにタワマンは含んでいない。それを前提にすると、他都市にある超高層ビルは平均3つ、先に述べた通り仙台は5つだから、むしろ仙台は超高層ビルが多い都市になるのである。

 

今後、更に超高層ビルが建つ予定があるだろうか?仙台市では、2009年に「仙台市『杜の都』景観計画」を策定し、街なかのビル建設に厳しい高さ制限を行っている。理由は、仙台城(青葉城址)からの景観を阻まないようにするためである。

 

但し例外もある。仙台駅周辺の一部地域だけは制限の対象外で、100m超の超高層ビルが建設される可能性が十分残っている。中でも注目が、仙台駅前にあるさくら野百貨店跡で、再開発される暁には30階超の超高層ビルが建設される予定だ。

 

低層階に商業施設、高層階にはオフィス・ホテルの入居が検討されている。仙台駅前に新たなランドマークが誕生するか?

(※画像はyahoo!画像より)

 

仙台市では未来を見据え、手を打っている。老朽化が進むビルの建て替えを促す”仙台版天神ビッグバン”「せんだい都心再構築プロジェクト」である。一定の要件を満たせば、規制を緩和し、場合によっては現状より高いビルを建設する事が可能になるのだ。

 

だが、このプロジェクトが順調に進んでいるとは言い難い。始動してから2年程経過したが、認定されたのは僅か1棟、ライバル宣言する福岡市の”天神ビッグバン”5年間に35棟のビルを建て替えたのを比べると、動きの鈍さがどうも気になってしまう。

 

原因は幾つかあるが、考えられるのはオフィス空室率がまず挙げられる。テレワーク等で働き方が変わったり、仙台に拠点を置く企業の撤退が相次ぎ、需要を慎重に眺めているのではないか。だが、それは福岡市も同じ筈だが、他地域から本社が移転したり、企業誘致をトップスピードで進めているのもあり、オフィス空室率が低く推移しているため、明暗分かれていると思われる。

 

もう一つは、地元企業の再開発に対する不慣れが考えられる。再開発ビルを手掛ける企業は、「環境影響評価」を仙台市へ提出しなければならず、自然、環境、騒音、電波等の観点で、ビル建設がどの程度影響を与えるかを細かく調べ、まとめる上、書類作成が煩雑で、調査をすればする程費用がかさむため、二の足を踏んでいるのである。

 

これでは絵に描いた餅になりかねないのではないか。このままではライバル・福岡市世紀の敗北を喫するし、更なる周回遅れに陥る。手遅れになる前に、仙台市には柔軟かつ弾力性ある運用が求められる。

 

※つづく