「ロック」という言葉が音楽の1ジャンルを指すものではなくそれ以上の意味を持っていた昔、物事を判断する際の尺度として「ロックであるか、否か」というのは非常に大きなものだった。「それって全然ロックじゃないね」なんて言い方が普通に通用したし、ロックであるかという問いはある種今の生き方は本当に望んだものか、社会に流されてないかと自分自身に問いかける価値観、人生観の話でもあった。
で2025年現在、そんな物言いはすっかり死滅した。「ロックは死んだ」とジョンライドンが言った時、実はロックはピンピンしていたのだ。嫌、イーグルスが歌ったように既に69年には精神性みたいなものは失われてしまっていたのかもしれない。しかし、少なくとも私がリアルタイムで体験した90年代後半から00年代初頭のロックはテクノ、ヒップホップなど様々なジャンル手法を呑み込み、今にして思えば最後の狂い咲きのような様相を見せて生き続けていた。
日本に限って言うと、毎月のように大物ロックバンドが来日し、雑誌やTV で見かける機会も多かった。フジロック以降フェスの文化が根付いてきた事も大きかっただろう。また当時、渋谷は世界一のレコード街と呼ばれ音楽好きに天国のような街だった。多くの海外ミュージシャンも渋谷のレコード店を訪れていた。
レッチリ、グリーンディ、フーファイターズ等当時のフェスのトリを飾るようなバンドは今もフェスのトリを務めている。数年前フジロックのある年のラインナップが20年前とあまり変わらないと話題になった事があったと記憶している。それは米国で人気のあるヒップホップ等の新進気鋭の旬な人気アーティストは日本では採算合わず来日しない(できない)という事情もあるだろうし、ジャンルとして確立化し保守化したロックから革新性やら新しい価値観を提示するバンドを求めるという行為がそもそも間違っているのかもしれない。
とこんな固い事を述べるためにツラツラ文書書こうと思ったわけでなく、今「それはロックじゃない」みたいな言い方ってないよなー、今なんて表現してんだろと思ったからで、ちょっとググればすぐ答えは出てきました笑
ヒップホップヘッズはリアルかリアルじゃないかと表現するらしく、あぁ何となく聞いたことあるわと腑に落ちました。最初ロックに変わる言い回しは無く、やはりロックは音楽ジャンルを指すもので無くユースカルチャー、政治的主張、アティチュードを表明する思想そのものだったのだと言うオチにしようと思っていたので、目論見が全て狂いました笑
とここまで読まれまして、皆様はヒップホップもわかっていないすげえ年寄りが現状を嘆いてるだけの文書だと思われているでしょう。嫌、俺だってエミネム大好きだったし、ジュラシック5とNAZをサマソニで生で見てるし、ニンジャチューンのイベントにも行ってるし、チャンスザラッパーをトリでガラガラだったサマソニの幕張メッセの1番前列で観て踊ってたし、大学生の時宇多丸のマブ論欠かさず読んでましたわ。
まあ今これロックじゃないねと言い回しを使うのは主にバーにいる時くらいですかね。
「マスター、これロックじゃないね」
「はい、水割りですから」
終