
さっぱり頭が回りません。
この間ゴールデン・ウイークを挟み、皆さんの楽しげな記事を眺めながら、僕は疲労と鬱積で悶々としています。
スランプかな?
いや、仕事が多忙でガンガンこなしていました。
決して病んでいた訳ではありません。
ただ、ブログのネタが降りてこない。
皆さんの記事は読んでいます。
でも、ノッていた時のようにコメントが浮かばない。
どうしよう?
あ、そうか、
過去の「思い出ネタ」なら、僕には「私小説」と言う膨大な「ネタ帳」が有るじゃないか……
と思い付きました。
今まさに
「新推敲版」を角川系小説サイト「カクヨム」に連載中です。
旧知の方々には
(またか?)とうんざりされましょうが、まあ、ありがたい事に新しい観覧者の方も増えております。
「私小説」の宣伝も兼ねて、僕の思い出エピソードをポチポチ語って行こうと思います。
(そのうち元気も取り戻すでしょう)

🌈私小説「僕のこの恋は何色?」より
1)弟の理久と姉の波奈
【これは幼少期のお話】
僕の子供の頃は習い事が流行り始めた時期かも知れない。女の子の習い事としてピアノが普及してきた。
が、しかし、家にピアノが有る家はまだまだ少なかったと思う。
今では全く見ない看板だけれど
「ピアノ教室」は「オルガン教室」をも兼ねていた。オルガンと言ってもエレクトーンとは別の話。
今ならピアノの代用品として良質な電子ピアノが普及しているけれど、当時はオンガンである。
足踏みオルガンが進化し、ある程度音量を調節できる電気オルガンが量産されてはいたけれど、所詮はオルガンである。
まずは安価なオルガンを試しに与え、上達の具合を見てモノになりそうなら頑張ってピアノに買い替える、と言うのが当時の親の考え方の主流だった。
ご多分に漏れず、我が家にも電気オルガンが置いてあった。姉の波奈《はな》に習わせるために母親が買った。
が、全くモノにならなかった。波奈《はな》には鍵盤楽器に対する素養が無かったらしい。
数ヵ月でオルガン教室を拒否した波奈には母親も諦めるしかなかったけれど、まだ3歳にもなるかどうかの弟の僕が、耳で聞いた姉の練習曲を姉より上手に再現している様子に驚き、母は僕を先生の元へと連れ込んだ。
すると先生「弟君の方を教えましょう」となったと言うのは後から聞いた話。僕自身には記憶がない。
物心付く頃にはちゃんとバイエルを譜面を見ながら弾いていた、と言うのが僕の記憶。
この話は波奈にとって
「して欲しくない二大禁忌話」のひとつらしい。
もうひとつの「して欲しくない話」は、このあと直ぐに出て来るからお待ちあれ。
ちなみに波奈は
「あれはね、オルガンが嫌だった訳じゃなくて、先生の家の玄関先にいた大きな犬が怖かったのよ。その点、理久《りく》は昔から動物好きだったから良かったわよね」
──と、未だに訴えるところを見るとよほど弁解したいエピソードらしい。
が、僕の記憶だと先生の家に犬はいない。まあ、喧嘩する気もないからキョトンとした顔で聞き流してはいるけれど。
今時のピアノ指導ではとかく不合理と言われるバイエルだけれど、当時はそれが主流だった。
しかし問題は「教本」以上に「楽器」だった。
オルガン教室と言いながら先生の家ではピアノを弾く。いかにオルガンがピアノの代用であったか、と言う実証だ。
で、家ではオルガンを弾く。これではまともな練習にならない。
ピアノとオルガンの機能の違いについては割愛するけれど、僕は程無く、その矛盾と不合理に気付いてしまう。
(ああ、ピアノが欲しいな…)
僕の欲求は日に日につのった。
ピアノがどれほど高価な代物で、そして個人事務所を立ち上げたばかりの父の財力では到底、手も届かない高嶺の花である事を、幼い僕はまだ知らなかった。
(美咲ちゃんは小学生になったお祝いにピアノを買って貰ったんだって……
僕も、小学校に上がれば買って貰えるのかなぁ?)
大人の事情を知らない僕は、ただ一生懸命にオルガンを弾いていた。
※──────────※
そして波奈の嫌がるもうひとつの禁忌話だ。
「坊ちゃん、色白ですねぇ」
物心ついた頃からよく聞いた台詞だ。肌が白い事に一体どんな価値があるんだろう?
──僕にはまるで分からなかった。
そしてこのやり取りが始まると、決って波奈の顔が曇り始める。
「弟さんは色白なのに、お姉さんは色黒なのね」
何の配慮もない発言だ。当時はハラスメントなどと言う概念もない。
とにかく、このやり取りは事あるごとに繰り返された。
そして決り文句!
「お姉さんと弟さん、逆だったら良かったのにねぇ」
──これがいわゆる、波奈にとっての「して欲しくない二大禁忌話し」の、もうひとつなのである。
それなら波奈は、ピアノと色白を弟に持っていかれた可哀想な子だったのか?と言うと、全くそうではない。
波奈はいつだって、僕にとってはヒーローだった。
ヒロインと言うとニュアンスが違う。
そこはあくまでもヒーローなのだ。
幼少の頃、波奈はまさに近所のガキ大将だった。
これまた姐御と言うとピンとこない。
正に大将だったのである。
波奈の元に近所の子供達が集まって、さて今日は何をして遊ぼうかとなり、波奈をリーダーに思いっきり遊び回った。
仲間の小さい子がよそのグループにいじめられたりしようものなら
「さあ!決闘だ!」と、意気込んで敵討ちに向かうような波奈だった。
波奈は僕にとって、そんな頼もしい姉だった。
🌈私小説
「僕のこの恋は何色?」
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