はじまりはスクリーン -6ページ目

はじまりはスクリーン

ずっと映画好き、50を越えても映画好き。
あと50年は映画が観たい。

久しぶりのシネマート新宿。

大きめのシアターで上映ですが、
けっこう混んでいました。
3連休だったのもありますが、
まだまだ話題の映画なんだと思います。
浮ついたところのない、
真摯なスパイ映画。
でもめちゃめちゃ面白いんです。
 
 
主要キャストに、
韓国を代表する演技派俳優、
ファン・ジョンミン、
イ・ソンミン、
チョ・ジヌン、
加えてチュ・ジフンまで。
でもって大好きな南北スパイもの、
遠出してでも観たかった作品です。
 
1990年代初頭からのお話、
さほど遠い時代ではないのに
こんなアナログな諜報活動。
隣国の近代史を知るたびに、
不思議な感覚に陥ります。
 
自国韓国の安全企画部から命を受け、
一般事業家に成りすまし、
北朝鮮の核施設の様子を探るスパイ、
コードネームは黒金星(ブラックヴィーナス)。
韓国諜報史上、最も有名な工作員の物語。
 
なんと言っても彼は、
時の最高指導者、金正日との面会まで成し遂げ、骨董品売買の仕事まで委託されたのだから、その手腕は半端ありません。
 
北の軍部上官に疑われ、自白剤まで打たれながらも任務を遂行します。
手に汗握る心理戦は無論ハラハラドキドキなのですが、何と言っても身を乗り出してしまったのは、オールセットだという平壌市内のロケーションと、あの金正日との接見シーン。
 
目を合わせてはいけない、ボタンの位置を見よ、話を遮ることは許されない、などなどの制約。
愛犬のマルチーズと一緒に現れる天下の金総書記。
その一挙手一投足に緊迫する周囲。
私も画面に釘付けでした。
撮影のスケール、完成度も素晴らしく、豪華だけれど無味乾燥な整然たる市内と、
死体が積まれ、垢にまみれたうつろな目の人々がたむろする郊外の路傍との格差も圧巻。
 
その中でしっかり描かれる、黒金星と北の外貨調達係リ所長を核とした人間ドラマ。
演じるのは、役への成り切り度お墨付きのファン・ジョンミンとイ・ソンミン。
二人が段階的に近づいていく様子がこちらにも違和感なく伝わってきます。
軍服姿の小賢しい表情もこれまた魅力的なチュ・ジフンが要所でスパイス的な存在感。
三人並んだ絵面がたまりません。
 
さらに物語は驚きの展開を見せます。
いよいよ北の懐に潜り込み、これからという時、自国大統領選挙の金大中当選を阻みたい安全企画部の「北風作戦」。
あれよあれよという間に変わる状況は、観ているほうも唖然。
誰が敵で誰が味方なのか、韓国の未来はどうなるのか、クライマックスに向けてぐいぐい引っ張られます。
ラストの演出もうまいことこの上なし。
ああいうシーンで盛り上げて、そこでそれを見せる?
どっちに転んでも泣ける仕組みです。
素晴らしい。
 
実話ベース、黒金星ご本人も観賞され、「ほぼ忠実に描かれていた」とおっしゃったそうです。
それが本当なら、こんな衝撃的なお話をとてもわかりやすくコンパクトにドラマティックに見せてもらえる、これぞ映画の醍醐味です。
観賞後、金大中、北風作戦で検索しまくったことは言うまでもありません。
 
知らなかった歴史を完成度の高いプロダクツによりインプットできる喜び、名優達の競演、緊張と緩和による高揚、様々味わえる上質な作品です。
 
でもって私はやっぱりイ・ソンミンが大好きです!
まだ彼の出演する「ミセン」「記憶」などの韓国ドラマをご覧になっていない方、ぜひ!
映画ではソン・ガンホの「弁護人」にも出てました。
 
私の満足度 90点