【軽くネタばれしてる感じです、ご注意!】
印象的な黄金色に色づいた木々のざわめきから、
この物語は始まった。
大学の非常勤講師として、
うだつの上がらない鬱々とした日々を送るユンジュ。
団地の中の、けたたましい犬の鳴き声に我慢できず、
犬の殺害を企てる。
一度は未遂に終わったものの、二度目はついに実行。
一方、最近の団地内の犬の失踪を調べるために、
管理事務所に勤めるヒョンナムが立ち上がる。
序盤、ユンジュのだらしなくて小心なくせに、
犬に対しての自己中心的な行動に腹がたって、
居心地が悪く、なんだかちょっとした失望感のようなものさえ感じた。
昔の朝鮮半島では犬を食べる習慣があったことも知っているが、
それでもくだんの警備員には気味の悪さを感じる。
そこにヒョンナムの登場。
彼女とその友人チャンミの存在が、素晴らしく微笑ましい。
特にユンジュとのチェイス後のヒョンナムは、
いきいきとしてかわいらしくて、
なおかつ映画の中の正義の部分を一手に引きうける。
ユンジュは大学の教授になるために、
多額の賄賂を用意しなければいけない上に、
身重の妻との生活への不安やすれ違いで狂気の1歩手前。
それが私にも少しずつみえてくる。
ヒョンナムと知り合った頃から、彼の中の何かが変り、
少しずつ人間らしさを取り戻しはじめる。
だが彼は結局、賄賂を用意し、教授にはなるものの、
大切な何かを捨ててしまう。
ラスト近く、犬殺しの真相を知ってほしくて、
街中をヒョンナムと一緒に走るユンジュ。
そこでユンジュの抱えていた、
どうしようもない闇の部分を思い、切なくて泣けてきた。
情けない現実を一生懸命、曇りなく生きるヒョンナム。
出世はしたものの、決して人生において
明るみには出られないユンジュ。
冒頭、黄金色の木々を眺めて、
「こんな天気のいい日は森に出かけて昼寝したい。」と言っていた彼。
カーテンでさえぎられた大学の窓からの木々を、
切ない表情でみつめるラスト。
混沌としたジャズのメロディーに、
ヒョンナムの黄色いヨットパーカー。
おばあさんの遺書と切干大根、100Mのトイレットペーパー、
そして 「フランダースの犬」。
三匹の犬をめぐるこの小さな物語は、
様々にシュールな断片を私の心に残してくれた。
